違約金を定めた労働契約は有効か?

1.賠償予定の禁止

外国人労働者を雇用する際、企業はビザ申請費用や渡航費、住居費用など、日本人労働者を採用する場合以上のコストを負担することが一般的です。このような多額の費用を投じて採用した労働者が短期間で退職することは、企業にとって大きな損失となります。

このリスクを回避しようと、企業が契約時に「退職時の違約金」を定めて労働者の離職を防ごうとするケースがあります。しかし、労働基準法第16条により、このような契約は違法とされています。

<労働基準法第16条>

使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、または損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

例えば、以下のような規定が該当します。

  • 「○年以内に退職した場合、ビザ申請費用や住居費、研修費用などを返還しなければならない」といった内容。

違反した場合は、6か月以下の懲役、または30万円以下の罰金が科されます。

このような違約金を設けることで、特に金銭的余裕のない外国人労働者が企業を離れることが困難になり、奴隷労働の温床となる可能性があります。

2.賠償予定の禁止の例外

研修・留学費用の返還請求

企業が費用を負担して労働者に研修や留学をさせた場合、その費用を一定の条件下で返還させる契約を結ぶケースがあります。このような契約が認められるには、以下の条件を満たす必要があります。

  1. 金銭消費貸借契約に基づき、費用を貸与していること。
  2. 業務命令ではなく、労働者が自発的に参加した研修や留学であること。
  3. 教育内容が企業の業務と直接的に関連しない場合であること。

これらの条件を満たしていれば、研修・留学費用の返還請求は例外的に認められる可能性があります。

3.事例(判例)

賠償予定禁止の違反とされた事例

企業が自社における教育訓練や能力開発の一環として業務命令で研修や留学を命じ、終了後に一定期間の勤務を義務付け、それに違反した場合の違約金を定めたケースは、賠償予定禁止の違反として違法とされます。

  • 東京地裁 平成10年3月17日判決(富士重工事件)
  • 東京地裁 平成10年9月25日判決(新日本証券事件)
賠償予定禁止の違反とされなかった事例

従業員の自主性に基づく留学や研修に対し、企業が金銭消費貸借契約の形で費用を貸与し、終了後一定期間勤務すればその返還を免除するという契約の場合は、違法ではないとされています。

  • 東京地裁 令和3年2月10日判決(みずほ証券事件)
  • 東京地裁 平成9年5月26日判決(長谷工コーポレーション事件)

4.入管法に係る現状

技能実習制度

技能実習制度では、転職の自由が制限されているため、賠償予定禁止の規定以前に奴隷労働との批判が高まっています。この制度においては、労働者が実質的に企業に縛られる状況が発生しやすいといえます。育成就労制度への移行に伴い、改善が期待されています。

特定技能制度

特定技能制度では、転職の自由が認められており、さらに労働基準法第16条を含む労働関係法令が厳格に適用されています。契約内容は審査段階でチェックされるため、企業が適切な労働契約を結ぶための仕組みが整っています。

一般の就労系資格(技術・人文知識・国際業務 等)

これらの資格では、特定技能制度ほどの規制はなく、企業が労働法令を十分に理解せずに違法な契約を結ぶリスクが存在します。特に、外国人労働者が日本の労働法令を十分に把握していない場合、企業・労働者双方が意図せず違法契約を結ぶことが少なくありません。

5.企業が取るべき対応

企業は労働基準法第16条をはじめとする労働関係法令を十分に理解し、法令に則った適切な労働契約を締結する必要があります。また、外国人労働者が法令を理解しやすいよう、契約内容の説明や教育を行うことも重要です。

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