入管法第2条の5第3項第1号
3 特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関は、次に掲げる事項が確保されているものとして法務省令で定める基準に適合するものでなければならない。
一 前2項の規定に適合する特定技能雇用契約(第19条の19第2号において「適合特定技能雇用契約」という。)の適正な履行
特定技能所属機関は、特定技能雇用契約の適正な履行を確保するため、特定技能基準省令で定める基準に適合する必要があります。
◆基準適合性の確認方法
当該基準への適合状況は、特定技能外国人の受け入れを継続している間、原則として定期届出において確認されます。
なお、特定技能外国人の初回受入れ時(過去に受入れ実績がある機関であっても、一度受け入れを終了し、直近の定期届出が提出されていない場合を含む)には、在留諸申請の際に所属機関の適格性が確認されることとなります。
◆基準不適合時の対応
特定技能外国人を受け入れている間に、所属機関が当該基準に適合しなくなった場合、「特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の基準不適合に係る届出」を行う必要があります
特定技能基準省令第2条第1項第1号
法第2条の5第3項の法務省令で定める基準のうち適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係るものは、次のとおりとする。
一 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること。
特定技能所属機関は、労働関係法令、社会保険関係法令、および租税関係法令を適切に遵守する必要があります。
◆労働関係法令の遵守
労働関係法令を遵守しているとは、以下の条件を満たしている場合を指します。
なお、労働保険の保険料の未納があった場合でも、地方出入国在留管理局の助言・指導に基づき納付手続を行った場合には、労働関係法令を遵守しているものと評価されます。
◆社会保険関係法令の遵守
社会保険関係法令を遵守しているとは、以下の条件を満たしている場合を指します。
<健康保険及び厚生年金保険の適用事業所の場合>
(注)猶予制度(分割納付)の許可を得ている場合とは、納付の猶予許可又は換価の猶予許可を受けている場合を指します。
<健康保険及び厚生年金保険の適用事業所ではない場合>
地方出入国在留管理局の助言・指導に基づき保険料を納付した場合も、社会保険関係法令を遵守しているものと評価されます。
◆租税関係法令の遵守
租税関係法令を遵守しているとは、以下の条件を満たしている場合を指します。
納付すべき税に未納があった場合であっても、地方出入国在留管理局の助言・指導に基づき納付した場合には、租税関係法令を遵守しているものと評価されますので、税務署等において相談の上、必要な手続を行うこと。また、特定技能外国人から特別徴収をした個人住民税を、特定技能所属機関が納入していないことに起因して、個人住民税の未納があることが判明した場合には、租税関係を遵守しているものとは評価されません。
<法人の場合>
<個人事業主の場合>
◆法理違反時の対応
特定技能基準省令第2条第1項第2号
二 特定技能雇用契約の締結の日前1年以内又はその締結の日以後に、当該特定技能雇用契約において外国人が従事することとされている業務と同等の業務に従事していた労働者(次に掲げる者を除く。)を離職させていないこと。
イ 定年その他これに準ずる理由により退職した者
ロ 自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された者
ハ 期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の期間満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了(労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該有期労働契約の期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、当該有期労働契約の相手方である特定技能所属機関が当該労働者の責めに帰すべき重大な理由により当該申込みを拒絶することにより当該有期労働契約を終了させる場合に限る。)された者
ニ 自発的に離職した者
特定技能外国人の受入れにあたり、現に雇用している国内労働者を非自発的に離職させ、その補填として特定技能外国人を雇用することは認められません。これは、本制度が人手不足への対応を目的としたものであり、既存の国内労働者の雇用を脅かすことが制度趣旨に反するためです。
◆雇用契約締結前後の非自発的離職の禁止
◆「同種業務に従事していた労働者」の定義
「特定技能雇用契約において外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者」とは、以下に該当する者を指します。
(※パートタイム労働者やアルバイトを含まれません。)
◆「非自発的離職」の定義
「非自発的に離職させた」とは、以下のいずれかのケースに該当する場合を指します。
非自発的離職者を1名でも発生させた場合は、基準に適合しないものとされます。
◆届出義務
特定技能基準省令第2条第1項第3号
三 特定技能雇用契約の締結の日前1年以内又はその締結の日以後に、当該特定技能雇用契約の相手方である特定技能所属機関の責めに帰すべき事由により、外国人の行方不明者を発生させていないこと。
特定技能所属機関が雇用する外国人について、責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させた場合、当該機関の受入れ体制が不十分であると判断されるため、雇用契約締結の前1年以内および契約締結後に行方不明者を発生させていないことが求められます。
◆行方不明者発生の禁止期間
本規定は、特定技能雇用契約の締結1年前のみならず、契約締結後も適用されるものであり、特定技能外国人の適正な受入れ体制の確保が求められます。
◆「外国人」の定義
本規定における「外国人」とは、以下に該当する者を指します。
◆「責めに帰すべき事由」の定義
特定技能外国人の行方不明者が発生した場合、その原因が特定技能所属機関の責めに帰すべき事由に起因する場合は、本基準に適合しないものとされます。具体的には、以下のような場合が該当します。
なお、行方不明者が1人でも発生した場合、人数に関係なく基準に適合しないものと判断されます。
◆技能実習生における適用
特定技能所属機関が、**技能実習制度における実習実施者(技能実習法施行前の実習実施機関を含む)**として、特定技能雇用契約の締結前1年以内または契約締結後に、受け入れた技能実習生の行方不明者を発生させた場合も、本基準に適合しないものとされます。
◆事業形態の変更による回避の禁止
特定技能所属機関が、基準不適合の回避を目的として別会社を設立した場合、実質的に同一の機関とみなされ、当該別会社も行方不明者を発生させた機関として取り扱われることがあります。
◆行方不明者の発生防止への取り組み
特定技能所属機関は、特定技能雇用契約を適切に履行することに加え、以下の対応を行い、外国人の安定した生活・就労の確保に努めなければなりません。
◆届出義務
特定技能基準省令第2条第1項第4号
四 次のいずれにも該当しないこと
イ 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
ロ 次に掲げる規定又はこれらの規定に基づく命令の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
ハ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)の規定(同法第50条(第2項に係る部分に限る。)及び第52条の規定を除く。)により、又は刑法(明治40年法律第45号)第204条、第206条、第208条、第208条の2、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
ニ 健康保険法(大正11年法律第70号)第208条、第213条の2若しくは第214条第1項、船員保険法(昭和14年法律第73号)第156条、第159条若しくは第160条第1項、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第51条前段若しくは第54条第1項(同法第51条前段の規定に係る部分に限る。)、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第102条、第103条の2若しくは第104条第1項(同法第102条又は第103条の2の規定に係る部分に限る。)、労働保険の保険徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)第46条前段若しくは第48条第1項(同法第46条前段の規定に係る部分に限る。)又は雇用保険法(昭和49年法律第116号)第83条若しくは第86条(同法第83条の規定に係る部分に限る。)の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
① 禁固以上の刑に処せられた者
② 出入国又は労働に関する法律に違反し、罰金刑に処せられた者
③ 暴力団関係法令、刑法等に違反し、罰金刑を処せられた者
④ 社会保険各法及び労働保険各法において事業主としての義務に違反し、罰金刑に処せられた者
特定技能基準省令第2条第1項第4号
四 次のいずれにも該当しないこと。
ト 技能実習法第16条第1項の規定により実習認定を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過しない者
チ 技能実習法第16条第1項の規定により実習認定を取り消された者が法人である場合(同項第3号の規定により実習認定を取り消された場合については、当該法人がロ又は二に規定する者に該当することとなったことによる場合に限る。)において、当該取消し処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認めれる者を含む。ヲにおいて同じ。)であった者で、当該取消しの日から起算して5年を経過しないもの
◆実習認定の取消しを受けた場合
実習実施者として技能実習生を受け入れていた際に、実習認定の取消しを受けた者は、取消し日から5年を経過するまで特定技能所属機関となることはできません。
この対象には、実習認定が取り消された法人の役員であった者も含まれます。
◆技能実習法施行前の不正行為に関する制限
技能実習法施行前の技能実習制度において、不正行為(技能実習の適正な実施を妨げるものとして「不正行為」の通知を受けたもの)に及んだ場合、以下の基準が適用されます。
このいずれかに該当する者は、特定技能所属機関となることはできません。
◆欠格事由の対象となる役員等
欠格事由の対象となる役員等には、形式的な法人の役員に限らず、実態として法人に強い支配力を有すると認められる者も含まれます。
具体的には、以下の者が対象となります。
特定技能基準省令第2条第1項第4号
四 次のいずれにも該当しないこと。
リ 特定技能雇用契約の締結の日前5年以内又はその締結の日以後に、次に掲げる行為その他の出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者
◆欠格事由の対象
特定技能雇用契約の締結前5年以内または契約締結後に、出入国または労働関係法令に関する不正行為等を行った者は、欠格事由に該当し、特定技能所属機関となることはできません。
◆想定される主な不正行為
以下の行為が確認された場合、欠格事由に該当するものと判断されます。
特定技能基準省令第2条第1項第4号
四 次のいずれにも該当しないこと。
ヌ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員」でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
ワ 暴力団員等がその事業活動を支配する者
次に該当する者は、暴力団排除の観点から欠格事由に該当し、特定技能所属機関になることはできません。
特定技能基準省令第2条第1項第4号
四 次のいずれにも該当しないこと。
ホ 精神の機能の障害により特定技能雇用契約の履行を適正に行うに当たっての必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者
ヘ 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者
ル 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人がイからヌまで又はヲのいずれかに該当するもの
ヲ 法人であって、その役員のうちにイからルまでのいずれかに該当する者があるもの
次のいずれかに該当する者は、行為能力・役員等の適格性の観点からの欠格事由に該当し、特定技能所属機関になることはできません。
特定技能基準省令第2条第1項第5号
五 特定技能雇用契約に係る外国人の活動の内容に係る文書等を作成し、当該外国人に当該特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所に当該特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備えて置くこととしていること。
特定技能所属機関に対し、特定技能外国人の活動状況に関する文書を作成し、特定技能外国人が業務に従事する事業所に備え付けることが求められます。
◆記載すべき事項
「活動の内容に係る文書」には少なくとも以下の事項記を記載する必要があります。。
① 特定技能外国人の管理簿
1.特定技能外国人の名簿(記載必須事項)
2.特定技能外国人の活動状況に関する帳簿(記載必須事項)
② 特定技能雇用契約の内容
③ 雇用条件
④ 特定技能外国人の待遇に係る事項が記載された書類
⑤ 特定技能外国人の出勤状況に関する書類
◆他法令に基づく書類の管理
その他の法令で作成が義務付けられている文書については、当該法令の規定に従い適切に作成・保存する必要があります。なお、他法令に基づき作成された文書を特定技能外国人の活動状況に関する文書として別途作成する必要はなく、既存の文書を活用することが可能です。
特定技能基準省令第2条第1項第6号及び第7号
六 特定技能雇用契約を締結するに当たり、外国人又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該外国人と社会生活において密接な関係を有する者が、当該特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、他の者に、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産の管理をされている場合、又は、他の者との間で、当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結している場合にあっては、そのことを認識して当該特定技能雇用契約を締結していないこと。
七 他の者との間で、特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結していないこと。
特定技能所属機関は、特定技能外国人およびその親族等が保証金の徴収、財産の管理、または違約金契約を締結させられている場合、その事実を認識した上で特定技能雇用契約を締結していないことが求められます。
◆保証金の徴収および財産管理の禁止
名目の如何を問わず、金銭その他の財産の管理を強制されることのないよう、広範に規制を適用します。
この規制の対象には、以下の事業者が含まれます。
特定技能外国人の本邦での活動に関与する仲介事業者に限らず、国内外を問わず、広く規制を適用することが求められます。
◆不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約の禁止
「不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」には、以下のような契約が該当します。
特定技能基準省令第2条第1項第8号
八 法別表第1の2の表の特定技能の項の下欄第1号に掲げる活動を行おうとする外国人と特定技能雇用契約を締結しようとする本邦の公私の機関にあっては、1号特定技能外国人支援に要する費用について、直接又は間接に当該外国人に負担させないこととしていること。
◆支援費用の負担原則
1号特定技能外国人に対する支援に要する費用(「義務的支援」に係るものに限る)は、本制度の趣旨に照らし、特定技能所属機関等が負担すべきものであり、特定技能外国人に直接的または間接的に負担させてはならないとされています。
◆支援費用の範囲
「支援に対する費用」とは、1号特定技能外国人に対する各種支援の実施に必要な費用を指し、以下の費用を含みます。
なお、住宅の賃貸料などの実費については、必要な範囲において本人に負担させることを妨げるものではありません。
◆費用負担の説明義務
1号特定技能外国人の受入れに際して、事前ガイダンスにおいて、支援費用を本人に負担させないことについて説明することが必要です。
また、生活オリエンテーションにおいても、同様の説明を実施することが求められます。
◆支援計画書の作成
1号特定技能外国人支援計画書は、申請人が十分に理解できる言語で作成し、申請人が内容を十分に理解した上で署名を行うことが求められます。
特定技能基準省令第2条第1項第9号
九 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関にあっては、次のいずれにも該当すること。
イ 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関が、次のいずれかに該当し、かつ、外国人が派遣先において従事する業務の属する特定産業分野を所管する関係行政機関の長と協議の上で適当であると認められる者であること。
ロ 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関が、第1号から第4号までのいずれにも該当する者に当該外国人に係る労働者派遣等をすることとしていること。
◆派遣元の要件
特定技能外国人を派遣労働者として受け入れる場合、派遣元となる機関は、当該外国人が従事する特定産業分野に関する業務を行っていることが求められます。
さらに、出入国在留管理庁長官と特定産業分野を所管する関係行政機関の長との協議の結果、適当であると認められた場合に限り受け入れが可能です。
◆派遣先の要件
派遣先についても、派遣元である特定技能所属機関と同様に、以下の要件を満たすことが求められます。
◆人材派遣会社の特定技能所属機関としての要件
人材派遣会社が派遣元として特定技能所属機関となるためには、特定技能所属機関の基準を満たすことに加え、特定技能基準省令第2条第1項第9号イ(1)から(4)までに規定する派遣元の基準のいずれかを満たす必要があります。
◆派遣元および派遣先の義務
派遣元となる特定技能所属機関および派遣先は、労働者派遣法等の関係法令を遵守することが求められます。
また、特定技能所属機関は、労働者派遣法第42条第3項に基づく派遣先からの報告を踏まえ、活動状況に係る届出(入管法第19条の18第2項第3号)を行わなければなりません
◆雇用形態の変更手続き
雇用形態を「直接雇用」から「派遣雇用」に変更する場合、派遣開始の約2カ月前までに、新たな雇用契約を締結した上で届出を行うことが必要です。
特定技能基準省令第2条第1項第10号
十 事実に関する労働者災害補償保険法による労働者災害補償保険に係る保険関係の成立の届出その他これに類する措置を講じていること。
◆労災保険の適用確保
特定技能外国人への労働者災害補償保険(労災保険)の適用を確保するため、特定技能所属機関が労災保険の適用事業所である場合、保険関係の成立の届出を適切に履行することが求められます。
◆労災保険の代替措置
「その他これに類する措置」とは、特定技能所属機関の事業が労災保険制度において暫定任意適用事業とされている農林水産業の一部に該当する場合を想定したものです。この場合、労災保険の代替措置として、労災保険に類する民間保険へ加入していることが必要とされます。
◆労災保険の適用事業所と暫定任意適用事業所
原則として、労働者を1名以上雇用する事業場は法律上、労災保険の適用事業所となります。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は暫定任意適用事業所とされ、労災保険が当然に適用されるものではありません。
特定技能基準省令第2条第1項第11号
十一 特定技能雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること。
特定技能所属機関は、特定技能外国人の安定した就労活動を確保するため、特定技能雇用契約を継続的に履行する体制を整備することが求められます。
◆継続的な履行体制の要件
特定技能所属機関は、事業を安定的に継続し、特定技能外国人と締結した雇用契約を確実に履行できる財政的基盤を有していることが必要です。
◆財政的基盤の判断基準
財政的基盤の有無については、特定技能所属機関の事業年度末における以下の要素を総合的に判断することとされます。
◆債務超過がある場合の対応
直近期末において債務超過が確認された場合は、以下の要件を満たす公的資格を有する第三者による改善見通しの評価書面を提出することが必要です。
特定技能基準省令第2条第1項第12号
十二 特定技能雇用契約に基づく外国人の報酬を、当該外国人の指定する銀行その他の金融機関に対する当該外国人の預金口座若しくは貯金口座への振込み又は当該外国人に現実に支払われた額を確認することができる方法によって支払われることとしており、かつ、当該預金口座又は貯金口座への振込み以外の方法によて報酬の支払をした場合には、出入国在留管理庁長官に対しその支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受けることとしていること。
◆報酬支払方法の確保
特定技能外国人に対する報酬の支払いをより確実かつ適正なものとするため、特定技能所属機関は、預貯金口座への振込みが可能であることを説明した上で、本人の同意を得た場合に、振込みによる支払いを行うことが求められます。
なお、労働基準法上、金融機関への振込みは労働者が希望した場合に限られるため、この点に留意する必要があります。
◆預貯金口座への振込み以外の支払方法を採った場合の対応
預貯金口座への振込み以外の方法で報酬を支払った場合、支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受ける必要があります。
この確認手続きは、特定技能所属機関が1年に1度提出する「受入れ・活動・支援実施状況に関する届出」の際に、「報酬支払証明書(参考様式第5-7号)」を提出することで行われます。
特定技能基準省令第2条第1項第12の2号
十二の二 特定技能雇用契約の当事者である外国人に関し、地方公共団体から、共生社会の実現のために実施する施策に対する協力を要請されたときは、当該要請に応じ、必要な協力をすることとしていること。
◆地方公共団体からの協力要請への対応
特定技能外国人の活動に関連し、事業所の所在地および住居地が属する地方公共団体から共生社会の実現のための施策(以下「共生施策」)への協力を要請された場合、特定技能所属機関は必要な協力を行うことが求められます。
◆共生施策の範囲
地方公共団体が実施する共生施策とは、特定技能所属機関(登録支援機関を含む)が特定技能外国人の支援に資するものを指します。
具体例として、以下のような施策が想定されます。
一方で、訪日外国人旅行客向けの案内など、特定技能外国人支援とは明確に関係のない施策は共生施策の対象とはなりません。
◆協力確認書の提出
特定技能所属機関は、初めて特定技能外国人を受け入れる場合、または既に受け入れている場合でも在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請を行う前に、市区町村(特別区を含む)に協力確認書を提出することが求められます。
◆地方出入国在留管理局による対応
地方公共団体から、特定技能外国人の支援に資する施策への協力要請が特定技能所属機関に対して行われたにもかかわらず、協力が得られないとの相談が寄せられた場合、地方出入国在留管理局は関係機関と事情を確認した上で、指導・助言・協力要請を行うことがあります。
特定技能所属機関が協力要請に応じない場合、以下の要素を総合的に勘案し、改善命令等が発令される可能性があります。
◆改善命令の具体例
入管法第2条の5第3項第2号
3 特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関は、次に掲げる事項が確保されるものとして法務省令で定める基準に適合するものでなければならない。
二 第6項及び第7項の規定に適合する第6項に規定する1号特定技能外国人支援計画(第5項及び第4章第1節第2款において「適合1号特定技能外国人支援計画」という。)の適正な実施
特定技能基準省令第2条第2項第1号
法第2条の5第3項の法務省令で定める基準のうち適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るものは、次のとおりとする。
一 次のいずれかに該当すること。
イ 過去2年間に法別表第1の1の表、2の表及び5の表の上覧の在留資格(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことができる在留資格に限る。ロにおいて同じ。)をもって在留する中長期在留者の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役員又は職員の中から、適合1号特定技能外国人支援計画の実施に関する責任者(以下「支援責任者」という。)及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに1名以上の適合1号特定技能外国人支援計画に基づく支援を担当する者(以下「支援担当者」という。)を選任していること(ただし、支援責任者は支援担当者を兼ねることができる。以下同じ。)。
ロ 役員又は職員であって過去2年間に法別表第1の1の表、2の表及び5の表の上欄の在留資格をもって在留する中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること。
ハ イ又はロの基準に適合する者のほか、これらの者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として認めたもので、役員又は職員の中から、支援責任者及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること。
◆特定技能所属機関がの要件
特定技能所属機関は、次のいずれかに該当しなければなりません。
①過去2年間の適正な外国人受入れおよび管理実績
②生活相談支援業務の経験を有する職員の選任
③出入国在留管理庁長官が認める支援業務実施能力
◆支援責任者の役割
支援責任者は、特定技能所属機関の役員または職員(常勤・非常勤を問わない)であり、支援担当者を監督する立場にあります。具体的には、以下の業務を統括管理します。
◆支援担当者の役割
支援担当者は、特定技能所属機関の役員または職員であり、1号特定技能外国人支援計画に沿った支援を実施することを任務とします。
◆「中長期在留者の受入れ・管理を適正に行った」とは
次の要件を満たしていることが求められます。
また、技能実習制度の実習実施者である場合、技能実習法第15条の「改善命令」または外国人技能実習機構から「改善勧告」を受けている場合には、法令遵守とは認められません。
◆「生活相談業務」の定義
生活相談業務とは、1号特定技能外国人に対する支援のうち、生活契約支援、生活オリエンテーション、定期的な面談の実施に関する支援を指します。
◆「①②と同程度に支援業務を適正に実施することができる者」の定義
以下の条件を満たす者が該当します。
◆判断基準
提出された資料に基づき個別に判断されます。考慮要素としては、以下のような要素が含まれます。
特定技能基準省令第2条第2項第2号
二 特定技能雇用契約の当事者である外国人に係る1号特定技能外国人支援計画に基づく職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を当該外国人が十分に理解することができる言語によって行うことができる体制を有していること。
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人支援計画の適正な履行を確保するため、以下の体制を整備することが求められます。
◆「十分に理解できる言語」の定義
「十分に理解できる言語」とは、特定技能外国人の母国語に限定されるものではなく、当該外国人が内容を正確に理解できる言語を指します。
◆「適切な相談体制」の確保
特定技能外国人が十分に理解できる言語による適切な相談体制を整えるため、通訳人を特定技能所属機関の職員として雇い入れることは必須ではありません。
特定技能基準省令第2条第2項第3号
三 1号特定技能外国人支援状況に係る文書を作成し、当該1号特定技能外国人支援を行う事業所に特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備えて置くこととしていること。
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人支援の状況に係る文書を作成し、特定技能雇用契約の終了日から1年以上備え置くことが求められます。
◆1号特定技能外国人支援の状況に係る文書の定義
「1号特定技能外国人支援の状況に係る文書」とは、以下の内容を含むものを指します。
これらの文書は、それぞれ定められた記載事項を正確に記載し、適切に管理することが求められます。
特定技能基準省令第2条第2項第4号
四 支援責任者及び支援担当者が、外国人を監督する立場にない者その他の1号特定技能外国人支援計画の中立な実施を行うことができる立場の者であり、かつ、第1項第4号イからルまでのいずれにも該当しない者であること。
◆支援責任者および支援担当者の要件
特定技能所属機関は、支援責任者および支援担当者に関し、以下の条件を満たすことを求められます。
◆外国人を監督する立場にない者の定義
「外国人を監督する立場にない者」とは、1号特定技能外国人と異なる部署の職員であり、当該外国人に対する指揮命令権を有さない者を指します。
ただし、異なる部署であっても、実質的に指揮命令を行える立場にある者は除外されます。
例えば、以下の者は適格性が認められません。
◆中立性の判断要素
「1号特定技能外国人支援計画の中立的な実施を行うことができる立場の者」であるかどうかは、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
特定技能基準省令第2条第2項第6号
六 支援責任者又は支援担当者が特定技能雇用契約の当事者である外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること。
◆定期面談の実施
特定技能所属機関は、特定技能外国人の安定的な就労と生活の確保のため、特定技能外国人本人だけでなく、その監督的立場にある者とも定期的な面談を行うことが求められます。
◆漁業分野における特例
漁業分野においては、漁船によって長期間洋上で操業し、3か月以上帰港しないケースがあることや、洋上での通信環境が脆弱であることを考慮し、通常の面談に代えて以下の対応を取ることが認められます。
◆「監督する立場にある者」の定義
「監督する立場にある者」とは、特定技能外国人と同じ部署に所属し、指揮命令権を有する者を指します。
派遣形態による受入れの場合
派遣形態による受入れにおいては、派遣先の監督的立場にある者との面談を行うことが必要です。
◆「定期的な面談」の頻度
「定期的な面談」とは、3か月に1回以上の頻度で実施するものを指します。
◆面談の事前準備
面談を効果的に実施するために、あらかじめ質問項目を整理し、アンケート等を実施することは差し支えありません
お問い合わせは、電話またはフォームにて受け付けております。
営業時間外、定休日でもお電話であれば夜20時まで受け付けています。
メールでのお問い合わせは24時間受け付けておりますので、まずはお気軽にご連絡ください。初回無料相談につきましては、対面での相談に加え、オンラインでの相談にも対応させていただいております。お気軽にご利用ください。
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定休日:土曜・日曜・祝日
事前のご予約で土日祝、夜間も対応可能です。