特定技能雇用契約の相手方の基準

関係規定

入管法第2条の5第3項第1号

3 特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関は、次に掲げる事項が確保されているものとして法務省令で定める基準に適合するものでなければならない。

一 前2項の規定に適合する特定技能雇用契約(第19条の19第2号において「適合特定技能雇用契約」という。)の適正な履行

ポイント
  • 特定技能所属機関は、特定技能雇用契約の適正な履行が確保されるものとして特定技能基準省令で定める基準に適合するものでなければなりません。
  • 当該基準に適合していることについては、受入れを継続している間は、原則として定期届出において確認することになります。なお、特定技能外国人の初回受入れ時(過去に受入れ実績がある機関であっても受入れを終了し、直近の定期届出が提出されていない場合を含む。)については在留諸申請において機関の適格性が確認されます。
  • 特定技能外国人を受け入れている間に、当該基準に適合しなくなった場合については、「特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の基準不適合に係る届出」を行う必要があります。

特定技能所属機関は、特定技能雇用契約の適正な履行を確保するため、特定技能基準省令で定める基準に適合する必要があります。

◆基準適合性の確認方法

当該基準への適合状況は、特定技能外国人の受け入れを継続している間、原則として定期届出において確認されます。

なお、特定技能外国人の初回受入れ時(過去に受入れ実績がある機関であっても、一度受け入れを終了し、直近の定期届出が提出されていない場合を含む)には、在留諸申請の際に所属機関の適格性が確認されることとなります。

◆基準不適合時の対応

特定技能外国人を受け入れている間に、所属機関が当該基準に適合しなくなった場合、「特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の基準不適合に係る届出」を行う必要があります

1.労働、社会保険及び租税に関する法令の規定の遵守

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第1号

法第2条の5第3項の法務省令で定める基準のうち適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係るものは、次のとおりとする。

一 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること。

ポイント

特定技能所属機関は、労働関係法令、社会保険関係法令、および租税関係法令を適切に遵守する必要があります。

◆労働関係法令の遵守

労働関係法令を遵守しているとは、以下の条件を満たしている場合を指します。

  • 労働基準法等の基準に則った特定技能雇用契約が締結されていること。
  • 雇用保険及び労災保険の適用事業所である場合、適切な適用手続と保険料の納付を行っていること

なお、労働保険の保険料の未納があった場合でも、地方出入国在留管理局の助言・指導に基づき納付手続を行った場合には、労働関係法令を遵守しているものと評価されます。

◆社会保険関係法令の遵守

社会保険関係法令を遵守しているとは、以下の条件を満たしている場合を指します。

<健康保険及び厚生年金保険の適用事業所の場合>

  • 健康保険および厚生年金保険の加入手続を適切に行い、従業員の被保険者資格取得手続を実施していること
  • 所定の保険料を適切に納付していること(猶予制度を利用する場合を含む)

(注)猶予制度(分割納付)の許可を得ている場合とは、納付の猶予許可又は換価の猶予許可を受けている場合を指します。

<健康保険及び厚生年金保険の適用事業所ではない場合>

  • 事業主が国民健康保険および国民年金に適切に加入し、保険料を納付していること(緩和措置や免除制度の適用を含む)

地方出入国在留管理局の助言・指導に基づき保険料を納付した場合も、社会保険関係法令を遵守しているものと評価されます。

租税関係法令の遵守

租税関係法令を遵守しているとは、以下の条件を満たしている場合を指します

  • 税務署等に相談の上、必要な納税手続を適切に行っていること
  • 特定技能外国人から特別徴収した個人住民税を適切に納入していること(未納がある場合、租税関係法令の遵守とは評価されない)

納付すべき税に未納があった場合であっても、地方出入国在留管理局の助言・指導に基づき納付した場合には、租税関係法令を遵守しているものと評価されますので、税務署等において相談の上、必要な手続を行うこと。また、特定技能外国人から特別徴収をした個人住民税を、特定技能所属機関が納入していないことに起因して、個人住民税の未納があることが判明した場合には、租税関係を遵守しているものとは評価されません。

<法人の場合>

  • 国税(源泉所得税、復興特別所得税、法人税、消費税、地方消費税)および地方税(法人住民税)を適切に納付していること(納税緩和措置の適用を含む)

<個人事業主の場合>

  • 国税(源泉所得税、復興特別所得税、申告所得税、消費税など)および地方税(個人住民税)を適切に納付していること(納税緩和措置の適用を含む)

◆法理違反時の対応

  • 法令を遵守していないことにより、関係行政機関から指導または処分を受けた場合は、その旨を届け出る必要があります。
  • 特に、労働関係法令に違反した場合は欠格事由(不正行為)に該当し、5年間特定技能外国人の受入れが認められない可能性があるため、適正な受入れを行うよう十分に留意する必要があります。

2.非自発的離職者の発生

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第2号

二 特定技能雇用契約の締結の日前1年以内又はその締結の日以後に、当該特定技能雇用契約において外国人が従事することとされている業務と同等の業務に従事していた労働者(次に掲げる者を除く。)を離職させていないこと。

イ 定年その他これに準ずる理由により退職した者

ロ 自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された者

ハ 期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の期間満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了(労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該有期労働契約の期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、当該有期労働契約の相手方である特定技能所属機関が当該労働者の責めに帰すべき重大な理由により当該申込みを拒絶することにより当該有期労働契約を終了させる場合に限る。)された者

ニ 自発的に離職した者

ポイント

特定技能外国人の受入れにあたり、現に雇用している国内労働者を非自発的に離職させ、その補填として特定技能外国人を雇用することは認められません。これは、本制度が人手不足への対応を目的としたものであり、既存の国内労働者の雇用を脅かすことが制度趣旨に反するためです。

◆雇用契約締結前後の非自発的離職の禁止

  • 特定技能雇用契約の締結の日の前1年以内のみならず、特定技能雇用契約締結後も非自発的離職者を発生させていないことが求められます。

◆「同種業務に従事していた労働者」の定義

「特定技能雇用契約において外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者」とは、以下に該当する者を指します。

  • 特定技能所属機関にフルタイムで雇用されている日本人労働者
  • 中長期在留者及び特別永住者の従業員

(※パートタイム労働者やアルバイトを含まれません。)

◆「非自発的離職」の定義

「非自発的に離職させた」とは、以下のいずれかのケースに該当する場合を指します。

非自発的離職者を1名でも発生させた場合は、基準に適合しないものとされます。

  1. 希望退職の募集・退職勧奨
    ​・人員整理のために希望退職の募集や退職勧奨を行った場合
    ただし、天候不順や自然災害の発生、新型コロナウイルス感染症等の影響により、経営上の努力を尽くしても雇用維持が困難な場合は除く

     
  2. 労働条件に関する重大な問題
    ・賃金の低下、賃金遅配、過度な時間外労働、採用条件との相違などにより、労働者が離職を決断した場合
  3. 就業環境に関する重大な問題
    ・故意の排斥や嫌がらせ等によって労働者が退職を余儀なくされた場合
  4. 特定技能外国人の責めに帰すべき理由によらない有期労働契約の終了
    ・雇用側の事情により契約が終了された場合

◆届出義務

  • 特定技能所属機関が非自発的離職者を発生させた場合は、「受入れ困難に係る届出」を行う必要があります。適切な雇用管理を行い、本制度の趣旨を順守することが求められます。

3.行方不明者の発生

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第3号

三 特定技能雇用契約の締結の日前1年以内又はその締結の日以後に、当該特定技能雇用契約の相手方である特定技能所属機関の責めに帰すべき事由により、外国人の行方不明者を発生させていないこと。

ポイント

特定技能所属機関が雇用する外国人について、責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させた場合、当該機関の受入れ体制が不十分であると判断されるため、雇用契約締結の前1年以内および契約締結後に行方不明者を発生させていないことが求められます。

行方不明者発生の禁止期間

本規定は、特定技能雇用契約の締結1年前のみならず、契約締結後も適用されるものであり、特定技能外国人の適正な受入れ体制の確保が求められます。

「外国人」の定義

本規定における「外国人」とは、以下に該当する者を指します。

  • 特定技能所属機関により受け入れられた特定技能外国人
  • 技能実習制度に基づき受け入れられた技能実習生

「責めに帰すべき事由」の定義

特定技能外国人の行方不明者が発生した場合、その原因が特定技能所属機関の責めに帰すべき事由に起因する場合は、本基準に適合しないものとされます。具体的には、以下のような場合が該当します。

  • 雇用条件通りに賃金を適正に支払っていない
  • 1号特定技能外国人支援計画を適正に実施していない
  • その他の法令違反や基準に適合しない行為が行われた期間中に、特定技能外国人が行方不明となった場合

なお、行方不明者が1人でも発生した場合、人数に関係なく基準に適合しないものと判断されます。

技能実習生における適用

特定技能所属機関が、**技能実習制度における実習実施者(技能実習法施行前の実習実施機関を含む)**として、特定技能雇用契約の締結前1年以内または契約締結後に、受け入れた技能実習生の行方不明者を発生させた場合も、本基準に適合しないものとされます。

事業形態の変更による回避の禁止

特定技能所属機関が、基準不適合の回避を目的として別会社を設立した場合、実質的に同一の機関とみなされ、当該別会社も行方不明者を発生させた機関として取り扱われることがあります。

行方不明者の発生防止への取り組み

特定技能所属機関は、特定技能雇用契約を適切に履行することに加え、以下の対応を行い、外国人の安定した生活・就労の確保に努めなければなりません。

  • 特定技能外国人からの相談に真摯に応じる
  • 適切な支援を提供し、行方不明者の発生を未然に防ぐ

届出義務

  • 雇用する特定技能外国人が行方不明となった場合は、「受入れ困難に係る届出」を行う必要があるため、適正な対応を徹底する必要があります。

4.関係法律による刑罰を受けたことによる欠格事由

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第4号

四 次のいずれにも該当しないこと

イ 禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者

ロ 次に掲げる規定又はこれらの規定に基づく命令の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者

  1. 労働基準法第117条(船員職業安定法第89条第1項又は労働者派遣法第44条第1項の規定により適用される場合を含む。)、第118条第1項(労働基準法第6条及び第56条の規定に係る部分に限る。)、第119条(同法第16条、第17条、第18条第1項及び第37条の規定に係る部分に限る。)及び第120条(同法第18条第7項及び第23条から第27条までのきれいに係る部分に限る。)の規定並びにこれらの規定に係る同法第121条の規定
  2. 船員法(昭和22年法律第100号)第129条(同法第85条第1項の規定に係る部分に限る。)、第130条(同法第33条、第34条第1項、第35条、第45条及び第66条(同法第88条の2の2第4項及び第5項並びに第88条の3第4項において準用する場合を含む。)の規定に係る部分に限る。)及び第131条(第1号(同法第53条第1項及び第2項、第54条、第56条並びにこれらの規定に係る部分に限る。)及び第3号に係る部分に限る。)の規定並びにこれらの規定に係る同法第135条第1項の規定(これらの規定が船員職業安定法第92条第1項の規定により適用される場合を含む。)
  3. 職業安定法(昭和22年法律第141号)第63条、第64条、第65条(第1号を除く。)及び第66条の規定並びにこれらの規定に係る同法第67条の規定
  4. 船員職業安定法第111条から第115条までの規定
  5. 法第71条の3、第71条の4、第73条の2、第73条の4から第74条の6の3まで、第74条の8及び第76条の2の規定
  6. 最低賃金法(昭和34年法律第137号)第40条の規定及び同条の規定に係る同法第42条の規定
  7. 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第40条第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定及び当該規定に係る同条第2項の規定
  8. 建設労働者の雇用の改善等に関する法律(昭和51年法律第33号)第49条、第50条及び第51条(第2号及び第3号を除く。)の規定並びにこれらの規定に係る同法第52条の規定
  9. 賃金の支払の確保等に関する法律(昭和51年法律第34号)第18条の規定及び同条の規定に係る同法第20条の規定
  10. 労働者派遣法第58条から第62条までの規定
  11. 港湾労働法(昭和63年法律第40号)第48条、第49条(第1号を除く。)及び第51条(第2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定並びにこれらの規定に係る同法第52条の規定
  12. 中小企業における労働力の確保及び良好な雇用の機会の創出のための雇用管理の改善の促進に関する法律(平成3年法律第57号)第19条、第20条及び第21条(第3号を除く。)の規定並びにこれらの規定に係る同法第22条の規定
  13. 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第62条から第65条までの規定
  14. 林業労働力の確保の推進に関する法律(平成8年法律第45号)第32条、第33条及び第34条(第3号を除く。)の規定並びにこれらの規定に係る同法第35条の規定
  15. 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(平成28年法律第89号。以下「技能実習法」という。)第108条、第109条、第110条(同法第44条の規定に係る部分に限る。)、第111条(第1号を除く。)及び第112条(第1号(同法第35条第1項の規定に係る部分に限る。)及び第6号から第11号までに係る部分に限る。)の規定並びにこれらの規定に係る同法第113条の規定
  16. 労働者派遣法第44条第4項の規定により適用される労働基準法第118条、第119条及び第121条の規定、船員職業安定法第89条第7項の規定により適用される船員法第129条から第131条までの規定並びに労働者派遣法第45条第7項の規定により適用される労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第119条及び第122条の規定

ハ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)の規定(同法第50条(第2項に係る部分に限る。)及び第52条の規定を除く。)により、又は刑法(明治40年法律第45号)第204条、第206条、第208条、第208条の2、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正15年法律第60号)の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者

ニ 健康保険法(大正11年法律第70号)第208条、第213条の2若しくは第214条第1項、船員保険法(昭和14年法律第73号)第156条、第159条若しくは第160条第1項、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)第51条前段若しくは第54条第1項(同法第51条前段の規定に係る部分に限る。)、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第102条、第103条の2若しくは第104条第1項(同法第102条又は第103条の2の規定に係る部分に限る。)、労働保険の保険徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)第46条前段若しくは第48条第1項(同法第46条前段の規定に係る部分に限る。)又は雇用保険法(昭和49年法律第116号)第83条若しくは第86条(同法第83条の規定に係る部分に限る。)の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者

ポイント
  • 次のいずれかに該当する場合には、欠格事由に該当し、特定技能所属機関になることはできません。

① 禁固以上の刑に処せられた者

② 出入国又は労働に関する法律に違反し、罰金刑に処せられた者

③ 暴力団関係法令、刑法等に違反し、罰金刑を処せられた者

④ 社会保険各法及び労働保険各法において事業主としての義務に違反し、罰金刑に処せられた者

  • いずれも、「刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者」がその対象となります。

5.実習認定の取消しを受けたことによる欠格事由

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第4号

四 次のいずれにも該当しないこと。

ト 技能実習法第16条第1項の規定により実習認定を取り消され、当該取消しの日から起算して5年を経過しない者

チ 技能実習法第16条第1項の規定により実習認定を取り消された者が法人である場合(同項第3号の規定により実習認定を取り消された場合については、当該法人がロ又は二に規定する者に該当することとなったことによる場合に限る。)において、当該取消し処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認めれる者を含む。ヲにおいて同じ。)であった者で、当該取消しの日から起算して5年を経過しないもの

ポイント

◆実習認定の取消しを受けた場合

実習実施者として技能実習生を受け入れていた際に、実習認定の取消しを受けた者は、取消し日から5年を経過するまで特定技能所属機関となることはできません。

この対象には、実習認定が取り消された法人の役員であった者も含まれます。

◆技能実習法施行前の不正行為に関する制限

技能実習法施行前の技能実習制度において、不正行為(技能実習の適正な実施を妨げるものとして「不正行為」の通知を受けたもの)に及んだ場合、以下の基準が適用されます。

  • 出入国または労働に関する法令に関し、不正または著しく不当な行為を行った者
  • 当該行為の終了日から受入れ停止期間が経過していない者

このいずれかに該当する者は、特定技能所属機関となることはできません。

◆欠格事由の対象となる役員等

欠格事由の対象となる役員等には、形式的な法人の役員に限らず、実態として法人に強い支配力を有すると認められる者も含まれます。

具体的には、以下の者が対象となります。

  • 業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者
  • 相談役、顧問等の肩書を持つ者であっても、法人に対し業務執行者と同等以上の支配力を有すると認められる者

6.出入国又は労働関係法令に関する不正行為を行ったこと

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第4号

四 次のいずれにも該当しないこと。

リ 特定技能雇用契約の締結の日前5年以内又はその締結の日以後に、次に掲げる行為その他の出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者

  1. 外国人に対して暴行し、脅迫し又は監禁する行為
  2. 外国人の旅券又は在留カードを取り上げる行為
  3. 外国人に支給する手当又は報酬の一部又は全部を支払わない行為
  4. 外国人の外出その他私生活の自由を不当に制限する行為
  5. 1から4までに掲げるもののほか、外国人の人権を著しく侵害する行為
  6. 外国人に係る出入国又は労働に関する法令に関して行われた不正又は著しく不当な行為に関する事実を隠蔽する目的又はその事業活動に関し外国人に法第3章第1節若しくは第2節の規定による証明書の交付、上陸許可の証印若しくは許可、同章第4節の規定による上陸の許可若しくは法第4章第1節若しくは第2節若しくは第5章第3節の規定による許可を受けさせる目的で、偽造若しくは変造された文書若しくは図面若しくは虚偽の文書若しくは図画を行使し、又は提供する行為
  7. 特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、保証金の徴収若しくは財産の管理又は当該特定技能雇用契約の不履行にに係る違約金を定める契約その他不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結する行為
  8. 外国人若しくはその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該外国人と社会生活において密接な関係を有する者との間で、特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産の管理をする者若しくは当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結した者又はこれらの行為をしようとする者からの紹介を受けて、当該外国人と当該特定技能雇用契約を締結する行為
  9. 法第19条の18の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をする行為
  10. 法第19条の20第1項の規定による報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の帳簿書類の提出若しくは提示をし、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避する行為
  11. 法第19条の21第1項の規定による処分に違反する行為
ポイント

◆欠格事由の対象

特定技能雇用契約の締結前5年以内または契約締結後に、出入国または労働関係法令に関する不正行為等を行った者は、欠格事由に該当し、特定技能所属機関となることはできません。

◆想定される主な不正行為

以下の行為が確認された場合、欠格事由に該当するものと判断されます。

  1. 外国人に対する暴行・脅迫・監禁
    • 刑事罰の有無を問わず、外国人への暴力、脅迫、監禁を行った場合
  2. 外国人の旅券・在留カードの取上げ
    • 失踪防止などの目的で、外国人の意思に反して旅券や在留カードを保管した場合
  3. 外国人への報酬・手当の不払い
    • 手当や報酬の一部または全部を支払わない場合
    • 不払金額、不払期間、事業主の認識などを勘案して評価
    • 食費・住居費等の天引きが適正でない場合も該当
  4. 外国人の外出その他私生活の自由を不当に制限
    • 携帯電話の没収など、外部との連絡を遮断する行為
  5. 外国人の人権を著しく侵害する行為
    • 人権擁護機関による確認がなされた場合
    • 預貯金通帳の取り上げや意に反する強制帰国などの行為
  6. 偽造・変造文書の行使・提供
    • 在留資格認定証明書、上陸許可証印等の不正取得を目的とした文書の偽造・提供
    • 地方出入国在留管理局の調査拒否や妨害行為
  7. 保証金の徴収等
    • 外国人やその家族から保証金を徴収する行為
    • 違約金を定めたり、不当に金銭その他の財産を移転させる契約
  8. 届出の不履行または虚偽の届
    • 行方不明者の未報告、活動状況・支援実施状況の届出不履行
  9. 報告徴収に対する妨害等
    • 入管法第19条の20第1項に基づく報告拒否や虚偽報告
  10. 改善命令違反
    • 出入国在留管理庁長官からの改善命令を遵守しない場合
  11. 不法就労者の雇用
    • 事業活動において不法就労を助長・斡旋した場合
  12. 労働関係法令違反
    • 長時間労働、労働安全衛生法違反、不当解雇等の行為
  13. 技能実習制度における不正行為
    • 実習実施者として不正行為を行い、受入れ停止期間が経過していない場合
  14. 不正行為を行った機関の役員等として従事していた者
    • 他の機関が不正行為を行った当時、経営者・役員・管理者であった場合
  15. 1号特定技能外国人支援計画における不正行為
    • 特定技能外国人の意思表示を妨げる行為や虚偽報告の未作成

7.暴力団排除の観点からの欠格事由

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第4号

四 次のいずれにも該当しないこと。

ヌ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員」でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)

ワ 暴力団員等がその事業活動を支配する者

ポイント

次に該当する者は、暴力団排除の観点から欠格事由に該当し、特定技能所属機関になることはできません。

  1. 暴力団員等およびその役員が暴力団員等である場合
    • 「暴力団員等」とは、暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者を指します。
  2. 暴力団員等が事業活動を支配している場合
    • 暴力団員等が、法人または事業体の運営に関して実質的な支配権を有している場合。

8.特定技能所属機関の行為能力・役員等の適格性に係る欠格事由

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第4号

​四 次のいずれにも該当しないこと。

ホ 精神の機能の障害により特定技能雇用契約の履行を適正に行うに当たっての必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者

ヘ 破産手続き開始の決定を受けて復権を得ない者

ル 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人がイからヌまで又はヲのいずれかに該当するもの

ヲ 法人であって、その役員のうちにイからルまでのいずれかに該当する者があるもの

ポイント

次のいずれかに該当する者は、行為能力・役員等の適格性の観点からの欠格事由に該当し、特定技能所属機関になることはできません。

  1. 精神機能の障害により特定技能雇用契約の適正な履行に必要な認知等を適切に行うことができない者
  2. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  3. 法人の役員、未成年の法定代理人で特定技能基準省令第2条第1項第4号各号(ワを除く。)に該当する者

9.特定技能外国人の活動状況に係る文書の作成等

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第5号

五 特定技能雇用契約に係る外国人の活動の内容に係る文書等を作成し、当該外国人に当該特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所に当該特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備えて置くこととしていること。

ポイント

特定技能所属機関に対し、特定技能外国人の活動状況に関する文書を作成し、特定技能外国人が業務に従事する事業所に備え付けることが求められます。

◆記載すべき事項

「活動の内容に係る文書」には少なくとも以下の事項記を記載する必要があります。。

① 特定技能外国人の管理簿

1.特定技能外国人の名簿(記載必須事項)

  • 氏名
  • 国籍・地域
  • 生年月日
  • 性別
  • 在留資格
  • 在留期間
  • 在留期間の満了日
  • 在留カード番号
  • 外国人雇用状況届出の届出日

2.特定技能外国人の活動状況に関する帳簿(記載必須事項)

  • 活動(就労)場所(派遣形態の場合、派遣先の氏名又は名称及び住所)
  • 従事した業務の内容
  • 雇用状況(在籍者、新規雇用者、自発的離職者、非自発的離職者、行方不明者)に関する内容
  • 労働保険(雇用保険及び労災保険)の適用状況
  • 社会保険(健康保険及び厚生年金保険)の加入状況
  • 特定技能外国人の受入れに要した費用の額及び内訳
  • 特定技能外国人の支援に要した費用の額及び内訳
  • 休暇の取得状況(一時帰国休暇の取得状況を含む。)
  • 行政機関からの指導又は処分に関する内容

② 特定技能雇用契約の内容

③ 雇用条件

④ 特定技能外国人の待遇に係る事項が記載された書類

  • 賃金台帳(労働基準法第108条 等)

⑤ 特定技能外国人の出勤状況に関する書類

  • 出勤簿等の記録

◆他法令に基づく書類の管理

その他の法令で作成が義務付けられている文書については、当該法令の規定に従い適切に作成・保存する必要があります。なお、他法令に基づき作成された文書を特定技能外国人の活動状況に関する文書として別途作成する必要はなく、既存の文書を活用することが可能です。

10.保証金の徴収・違約金契約等による欠格事由

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第6号及び第7号

六 特定技能雇用契約を締結するに当たり、外国人又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該外国人と社会生活において密接な関係を有する者が、当該特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、他の者に、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産の管理をされている場合、又は、他の者との間で、当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結している場合にあっては、そのことを認識して当該特定技能雇用契約を締結していないこと。

七 他の者との間で、特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結していないこと。

ポイント

特定技能所属機関は、特定技能外国人およびその親族等が保証金の徴収、財産の管理、または違約金契約を締結させられている場合、その事実を認識した上で特定技能雇用契約を締結していないことが求められます。

◆保証金の徴収および財産管理の禁止

名目の如何を問わず、金銭その他の財産の管理を強制されることのないよう、広範に規制を適用します。

この規制の対象には、以下の事業者が含まれます。

  • 特定技能所属機関
  • 登録支援機関
  • 職業紹介事業者
  • 本邦外の仲介事業者(ブローカー等)

特定技能外国人の本邦での活動に関与する仲介事業者に限らず、国内外を問わず、広く規制を適用することが求められます。

◆不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約の禁止

「不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約」には、以下のような契約が該当します。

  1. 労働契約の不履行に伴う違約金の設定
    • 特定技能外国人が失踪することなどを理由として違約金を定める契約
  2. 法令違反に関する相談禁止と違約金の設定
    • 地方出入国在留管理局や労働基準監督署への法令違反に関する相談を禁じ、その違約金を定める契約
  3. 不当な行動制限と違約金の設定
    • 休日の外出を許可制とし、無許可での外出を禁じる契約
    • 作業時間中のトイレ等への離席を禁止し、その違約金を定める契約
  4. 不当に高額な料金を徴収する契約
    • 商品やサービスの対価として不当に高額な金銭の徴収を予定する契約

11.支援の要する費用の負担

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第8号

八 法別表第1の2の表の特定技能の項の下欄第1号に掲げる活動を行おうとする外国人と特定技能雇用契約を締結しようとする本邦の公私の機関にあっては、1号特定技能外国人支援に要する費用について、直接又は間接に当該外国人に負担させないこととしていること。

ポイント

◆支援費用の負担原則

1号特定技能外国人に対する支援に要する費用(「義務的支援」に係るものに限る)は、本制度の趣旨に照らし、特定技能所属機関等が負担すべきものであり、特定技能外国人に直接的または間接的に負担させてはならないとされています。

◆支援費用の範囲

「支援に対する費用」とは、1号特定技能外国人に対する各種支援の実施に必要な費用を指し、以下の費用を含みます。

  • 登録支援機関への委託費用
  • 事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談・苦情対応、定期的な面談の実施に係る通訳人の通訳費等
  • 出入国時の送迎に要する交通費等

なお、住宅の賃貸料などの実費については、必要な範囲において本人に負担させることを妨げるものではありません。

◆費用負担の説明義務

1号特定技能外国人の受入れに際して、事前ガイダンスにおいて、支援費用を本人に負担させないことについて説明することが必要です。

また、生活オリエンテーションにおいても、同様の説明を実施することが求められます。

◆支援計画書の作成

1号特定技能外国人支援計画書は、申請人が十分に理解できる言語で作成し、申請人が内容を十分に理解した上で署名を行うことが求められます。

12.派遣形態による受入れ

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第9号

九 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関にあっては、次のいずれにも該当すること。

イ 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関が、次のいずれかに該当し、かつ、外国人が派遣先において従事する業務の属する特定産業分野を所管する関係行政機関の長と協議の上で適当であると認められる者であること。

  1. 当該特定産業分野に係る業務又はこれに関連する業務を行っている者であること。
  2. 地方公共団体又は1に掲げる者が資本金の過半数を出資していること。
  3. 地方公共団体の職員又は1に掲げる者若しくはその役員若しくは職員が役員であることその他地方公共団体又は1に掲げる者が業務執行に実質的に関与していると認められる者であること
  4. 外国人が派遣先において従事する業務の属する分野が農業である場合にあっては、国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)第16条の5第1項に規定する特定機関であること。

ロ 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関が、第1号から第4号までのいずれにも該当する者に当該外国人に係る労働者派遣等をすることとしていること。

ポイント

◆派遣元の要件

特定技能外国人を派遣労働者として受け入れる場合、派遣元となる機関は、当該外国人が従事する特定産業分野に関する業務を行っていることが求められます。

さらに、出入国在留管理庁長官と特定産業分野を所管する関係行政機関の長との協議の結果、適当であると認められた場合に限り受け入れが可能です。

◆派遣先の要件

派遣先についても、派遣元である特定技能所属機関と同様に、以下の要件を満たすことが求められます。

  • 労働関係法令の遵守
  • 社会保険及び租税関係法令の遵守
  • 一定の欠格事由に該当しないこと

◆人材派遣会社の特定技能所属機関としての要件

人材派遣会社が派遣元として特定技能所属機関となるためには、特定技能所属機関の基準を満たすことに加え、特定技能基準省令第2条第1項第9号イ(1)から(4)までに規定する派遣元の基準のいずれかを満たす必要があります。

◆派遣元および派遣先の義務

派遣元となる特定技能所属機関および派遣先は、労働者派遣法等の関係法令を遵守することが求められます。

また、特定技能所属機関は、労働者派遣法第42条第3項に基づく派遣先からの報告を踏まえ、活動状況に係る届出(入管法第19条の18第2項第3号)を行わなければなりません

◆雇用形態の変更手続き

雇用形態を「直接雇用」から「派遣雇用」に変更する場合、派遣開始の約2カ月前までに、新たな雇用契約を締結した上で届出を行うことが必要です。

 

13.労災保険法に係る措置等

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第10号

十 事実に関する労働者災害補償保険法による労働者災害補償保険に係る保険関係の成立の届出その他これに類する措置を講じていること。

ポイント

労災保険の適用確保

特定技能外国人への労働者災害補償保険(労災保険)の適用を確保するため、特定技能所属機関が労災保険の適用事業所である場合、保険関係の成立の届出を適切に履行することが求められます。

労災保険の代替措置

「その他これに類する措置」とは、特定技能所属機関の事業が労災保険制度において暫定任意適用事業とされている農林水産業の一部に該当する場合を想定したものです。この場合、労災保険の代替措置として、労災保険に類する民間保険へ加入していることが必要とされます。

労災保険の適用事業所と暫定任意適用事業所

原則として、労働者を1名以上雇用する事業場は法律上、労災保険の適用事業所となります。

ただし、以下のいずれかに該当する場合は暫定任意適用事業所とされ、労災保険が当然に適用されるものではありません。

  • 労働者5人未満の個人経営の農業(特定の危険または有害な作業を主としない事業)
  • 労働者を常時使用せず、年間使用延労働者数が300人未満の個人経営の林業
  • 労働者5人未満の個人経営の畜産、養蚕または水産業(総トン数5トン未満の漁船による事業等)

14.特定技能雇用契約継続履行体制

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第11号

十一 特定技能雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること。

ポイント

特定技能所属機関は、特定技能外国人の安定した就労活動を確保するため、特定技能雇用契約を継続的に履行する体制を整備することが求められます。

継続的な履行体制の要件

特定技能所属機関は、事業を安定的に継続し、特定技能外国人と締結した雇用契約を確実に履行できる財政的基盤を有していることが必要です。

財政的基盤の判断基準

財政的基盤の有無については、特定技能所属機関の事業年度末における以下の要素を総合的に判断することとされます。

  • 欠損金の有無
  • 債務超過の有無

債務超過がある場合の対応

直近期末において債務超過が確認された場合は、以下の要件を満たす公的資格を有する第三者による改善見通しの評価書面を提出することが必要です。

  • 中小企業診断士
  • 公認会計士等、企業評価を行う能力を有すると認められる者

15.報酬の口座振込み等

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第12号

十二 特定技能雇用契約に基づく外国人の報酬を、当該外国人の指定する銀行その他の金融機関に対する当該外国人の預金口座若しくは貯金口座への振込み又は当該外国人に現実に支払われた額を確認することができる方法によって支払われることとしており、かつ、当該預金口座又は貯金口座への振込み以外の方法によて報酬の支払をした場合には、出入国在留管理庁長官に対しその支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受けることとしていること。

ポイント

報酬支払方法の確保

特定技能外国人に対する報酬の支払いをより確実かつ適正なものとするため、特定技能所属機関は、預貯金口座への振込みが可能であることを説明した上で、本人の同意を得た場合に、振込みによる支払いを行うことが求められます。

なお、労働基準法上、金融機関への振込みは労働者が希望した場合に限られるため、この点に留意する必要があります。

預貯金口座への振込み以外の支払方法を採った場合の対応

預貯金口座への振込み以外の方法で報酬を支払った場合、支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受ける必要があります。

この確認手続きは、特定技能所属機関が1年に1度提出する「受入れ・活動・支援実施状況に関する届出」の際に、「報酬支払証明書(参考様式第5-7号)」を提出することで行われます。

16.地域における共生社会の実現のため寄与する責務

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第12の2号

十二の二 特定技能雇用契約の当事者である外国人に関し、地方公共団体から、共生社会の実現のために実施する施策に対する協力を要請されたときは、当該要請に応じ、必要な協力をすることとしていること。

ポイント

地方公共団体からの協力要請への対応

特定技能外国人の活動に関連し、事業所の所在地および住居地が属する地方公共団体から共生社会の実現のための施策(以下「共生施策」)への協力を要請された場合、特定技能所属機関は必要な協力を行うことが求められます。

共生施策の範囲

地方公共団体が実施する共生施策とは、特定技能所属機関(登録支援機関を含む)が特定技能外国人の支援に資するものを指します。

具体例として、以下のような施策が想定されます。

  • 各種行政サービス
  • 交通・ゴミ出しのルールの周知
  • 医療・公衆衛生施策
  • 防災訓練・災害対策
  • 日本語教室の提供

一方で、訪日外国人旅行客向けの案内など、特定技能外国人支援とは明確に関係のない施策は共生施策の対象とはなりません。

協力確認書の提出

特定技能所属機関は、初めて特定技能外国人を受け入れる場合、または既に受け入れている場合でも在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請を行う前に、市区町村(特別区を含む)に協力確認書を提出することが求められます。

  1. 協力確認書の提出対象
    • 受け入れる(または受け入れている)特定技能外国人の活動する事業所所在地
    • 住居地が属する市区町村
  2. 協力確認書の提出のタイミング
    • 初めて在留諸申請を行う際に市区町村へ提出
    • 同じ事業所で活動する他の特定技能外国人の申請時には再提出不要
    • 事業所所在地や住居地、担当連絡先等に変更が生じた場合は再提出が必要
    • 特定技能外国人の転職・転出や帰国時には市区町村への連絡不要

地方出入国在留管理局による対応

地方公共団体から、特定技能外国人の支援に資する施策への協力要請が特定技能所属機関に対して行われたにもかかわらず、協力が得られないとの相談が寄せられた場合、地方出入国在留管理局は関係機関と事情を確認した上で、指導・助言・協力要請を行うことがあります。

特定技能所属機関が協力要請に応じない場合、以下の要素を総合的に勘案し、改善命令等が発令される可能性があります。

  • 関連する地方公共団体の共生施策の内容
  • 特定技能所属機関の関与の必要性および相当性
  • 職業生活・日常生活・社会生活における支援の確保が困難となり、適正な在留・支援計画の実施に重大な支障が生じていると認められる場合

改善命令の具体例

  • 条例により事業主に求められる感染防止措置の履行を怠り、地域住民と特定技能外国人間でトラブルが発生したケース
  • 従業員への情報周知を怠り、行政からの再三の指導にもかかわらず改善されないケース

17.分野に特有の事情に鑑みて定められた基準

関係規定

特定技能基準省令第2条第1項第13号

十三 前各号に掲げるもののほか、法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。

ポイント
  • 特定産業分野ごとの特有の事情に鑑みて個別に定める基準に適合していることを求めるものです。
  • 分野によっては告示で基準を定めていない場合もあるほか、告示で基準が定められている場合であってもその内容は分野ごとに異なります。

1.中長期在留者の受入れ実績等

関係規定

入管法第2条の5第3項第2号

3 特定技能雇用契約の相手方となる本邦の公私の機関は、次に掲げる事項が確保されるものとして法務省令で定める基準に適合するものでなければならない。

二 第6項及び第7項の規定に適合する第6項に規定する1号特定技能外国人支援計画(第5項及び第4章第1節第2款において「適合1号特定技能外国人支援計画」という。)の適正な実施

特定技能基準省令第2条第2項第1号

法第2条の5第3項の法務省令で定める基準のうち適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るものは、次のとおりとする。

一 次のいずれかに該当すること。

イ 過去2年間に法別表第1の1の表、2の表及び5の表の上覧の在留資格(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことができる在留資格に限る。ロにおいて同じ。)をもって在留する中長期在留者の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役員又は職員の中から、適合1号特定技能外国人支援計画の実施に関する責任者(以下「支援責任者」という。)及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに1名以上の適合1号特定技能外国人支援計画に基づく支援を担当する者(以下「支援担当者」という。)を選任していること(ただし、支援責任者は支援担当者を兼ねることができる。以下同じ。)。

ロ 役員又は職員であって過去2年間に法別表第1の1の表、2の表及び5の表の上欄の在留資格をもって在留する中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること。

ハ イ又はロの基準に適合する者のほか、これらの者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として認めたもので、役員又は職員の中から、支援責任者及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること。

ポイント

特定技能所属機関がの要件

特定技能所属機関は、次のいずれかに該当しなければなりません。

①過去2年間の適正な外国人受入れおよび管理実績

  • 就労活動を目的とする中長期在留者(特定活動の在留資格を含む)を適正に受け入れ、管理した実績を有すること
  • 役員または職員の中から、1号特定技能外国人支援計画の実施責任者(支援責任者)を選任すること
  • 事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任すること

②生活相談支援業務の経験を有する職員の選任

  • 役員または職員の中から、過去2年間に就労を目的とする中長期在留者の生活相談支援業務に従事した経験を有する者を支援責任者として選任すること
  • 事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任すること

③出入国在留管理庁長官が認める支援業務実施能力

  • ①または②に該当しない場合でも、中長期在留者の適正な受入れ実績等を有し、適切な支援業務を実施できる者として認められること

支援責任者の役割

支援責任者は、特定技能所属機関の役員または職員(常勤・非常勤を問わない)であり、支援担当者を監督する立場にあります。具体的には、以下の業務を統括管理します。

  • 1号特定技能外国人支援計画の作成
  • 支援担当者および支援業務従事者の管理
  • 支援の進捗状況の確認
  • 支援状況の届出の実施
  • 支援状況に関する帳簿の作成・保管
  • 制度所管省庁、業所管省庁、関係機関との連絡・調整
  • その他支援に必要な事項全般

支援担当者の役割

支援担当者は、特定技能所属機関の役員または職員であり、1号特定技能外国人支援計画に沿った支援を実施することを任務とします

  • 常勤であることが望ましい。
  • 支援責任者が支援担当者を兼任することも可能(ただし双方の基準に適合することが必要)
  • 複数の1号特定技能外国人の支援を担当することも可能

「中長期在留者の受入れ・管理を適正に行った」とは

次の要件を満たしていることが求められます。

  • 1名以上の中長期在留者(収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を行う在留資格者)の受入れまたは管理実績があること
  • 入管法、技能実習法、労働関係法令等の規定を遵守していること
  • 賃金の不払いや違約金契約の締結がないこと

また、技能実習制度の実習実施者である場合、技能実習法第15条の「改善命令」または外国人技能実習機構から「改善勧告」を受けている場合には、法令遵守とは認められません

「生活相談業務」の定義

生活相談業務とは、1号特定技能外国人に対する支援のうち、生活契約支援、生活オリエンテーション、定期的な面談の実施に関する支援を指します。

  • 職業紹介事業者が求人情報を紹介する行為のみでは、生活相談業務とは認められない
  • 業務として実施された相談に限るため、個人的な人間関係に基づく相談(ボランティア活動を含む)は実績とは認められない
  • 生活相談の対象は、収入を伴う事業運営または報酬を受ける活動が可能な在留資格者に限られる

「①②と同程度に支援業務を適正に実施することができる者」の定義

以下の条件を満たす者が該当します。

  • 中長期在留者の適正な受入れ実績を有する機関と同程度に支援業務を適正に実施できる機関
  • これまで日本人労働者等を適正・適切に雇用してきた実績のある機関であり、責任をもって支援を行うことが見込まれること
  • 労働関係法令を遵守していること(例:労働基準監督署から是正勧告を受けていないこと

判断基準

提出された資料に基づき個別に判断されます。考慮要素としては、以下のような要素が含まれます。

  • 本邦在留外国人(在留資格不問)の雇用管理・生活相談実績
  • 適切な支援を行う能力・体制を備えているか
  • 支援業務を担当する職員の経験・資格

2.十分に理解できる言語による支援体制

関係規定

特定技能基準省令第2条第2項第2号

二 特定技能雇用契約の当事者である外国人に係る1号特定技能外国人支援計画に基づく職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を当該外国人が十分に理解することができる言語によって行うことができる体制を有していること。

ポイント

特定技能所属機関は、1号特定技能外国人支援計画の適正な履行を確保するため、以下の体制を整備することが求められます

  • 特定技能外国人が十分に理解できる言語による適切な情報提供体制
  • 担当職員を確保し、特定技能外国人が十分に理解できる言語による適切な相談体制

「十分に理解できる言語」の定義

「十分に理解できる言語」とは、特定技能外国人の母国語に限定されるものではなく、当該外国人が内容を正確に理解できる言語を指します

「適切な相談体制」の確保

特定技能外国人が十分に理解できる言語による適切な相談体制を整えるため、通訳人を特定技能所属機関の職員として雇い入れることは必須ではありません。

  • 必要な際に委託するなどして、通訳人を確保できる体制が整っていれば適正とされます。

3.支援の実施状況に係る文書の作成等

関係規定

特定技能基準省令第2条第2項第3号

三 1号特定技能外国人支援状況に係る文書を作成し、当該1号特定技能外国人支援を行う事業所に特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備えて置くこととしていること。

ポイント

特定技能所属機関は、1号特定技能外国人支援の状況に係る文書を作成し、特定技能雇用契約の終了日から1年以上備え置くことが求められます。

◆1号特定技能外国人支援の状況に係る文書の定義

「1号特定技能外国人支援の状況に係る文書」とは、以下の内容を含むものを指します。

  • 支援の実施体制に関する記録
  • 他の者に委託した場合の委託契約に関する文書
  • 対象者および支援の実施に関する管理簿

これらの文書は、それぞれ定められた記載事項を正確に記載し、適切に管理することが求められます。

4.支援の中立性

関係規定

特定技能基準省令第2条第2項第4号

四 支援責任者及び支援担当者が、外国人を監督する立場にない者その他の1号特定技能外国人支援計画の中立な実施を行うことができる立場の者であり、かつ、第1項第4号イからルまでのいずれにも該当しない者であること。

ポイント

◆支援責任者および支援担当者の要件

特定技能所属機関は、支援責任者および支援担当者に関し、以下の条件を満たすことを求められます。

  • 1号特定技能外国人を監督する立場にないこと
  • 特定技能所属機関と当該外国人の間に紛争が生じた場合、中立的な立場であること
  • 一定の欠格事由に該当しないこと

◆外国人を監督する立場にない者の定義

「外国人を監督する立場にない者」とは、1号特定技能外国人と異なる部署の職員であり、当該外国人に対する指揮命令権を有さない者を指します。
ただし、異なる部署であっても、実質的に指揮命令を行える立場にある者は除外されます

例えば、以下の者は適格性が認められません

  • 代表取締役
  • 外国人が所属する部署を監督する管理職(例:製造課に所属する場合の製造部長)
  • 組織図上、外国人に対して指揮命令権を持つ縦のラインにある者

◆中立性の判断要素

「1号特定技能外国人支援計画の中立的な実施を行うことができる立場の者」であるかどうかは、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。

  • 事業形態
  • 中立性の判断要素外国人を監督する立場にある者と支援責任者・支援担当者との関係性

5.支援実施義務の不履行

関係規定

特定技能基準省令第2条第2項第5号

五 特定技能雇用契約の締結の日前5年以内又はその締結の日以後に、法第19条の22第1項の規定に反して適合1号特定技能外国人支援計画に基づいた1号特定技能外国人支援を怠ったことがないこと。

ポイント

特定技能所属機関が1号特定技能外国人支援を適正に実施していなかった場合、支援を適正に実施する体制が十分であるとは認められません

 

このため、特定技能雇用契約の締結前5年以内および契約締結後に、当該支援を怠ったことがないことが求められます。

6.定期的な面談の実施

関係規定

特定技能基準省令第2条第2項第6号

六 支援責任者又は支援担当者が特定技能雇用契約の当事者である外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること。

ポイント

◆定期面談の実施

特定技能所属機関は、特定技能外国人の安定的な就労と生活の確保のため、特定技能外国人本人だけでなく、その監督的立場にある者とも定期的な面談を行うことが求められます。

◆漁業分野における特例

漁業分野においては、漁船によって長期間洋上で操業し、3か月以上帰港しないケースがあることや、洋上での通信環境が脆弱であることを考慮し、通常の面談に代えて以下の対応を取ることが認められます

  • 3か月に1回以上の頻度で、無線や船舶電話を用いて特定技能外国人および監督者と連絡を取ること
  • 近隣の港に帰港した際に、支援担当者が面談を実施するこ

◆「監督する立場にある者」の定義

「監督する立場にある者」とは、特定技能外国人と同じ部署に所属し、指揮命令権を有する者を指します。

派遣形態による受入れの場合

派遣形態による受入れにおいては、派遣先の監督的立場にある者との面談を行うことが必要です。

◆「定期的な面談」の頻度

「定期的な面談」とは、3か月に1回以上の頻度で実施するものを指します。

◆面談の事前準備

面談を効果的に実施するために、あらかじめ質問項目を整理し、アンケート等を実施することは差し支えありません

7.分野に特有の事情に鑑みて定められた基準

関係規定

特定技能基準省令第2条第2項第7号

七 前各号に掲げるもののほか、法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。

ポイント
  • 特定産業分野ごとの特有の事情に鑑みて個別に定める基準に適合していることを求めるものです。
  • 分野によっては告示で基準を定めていない場合もあり、定められている場合であってもその内容は分野ごとに異なります。

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