1号特定技能外国人を受け入れる企業は、建設特定技能受入計画を作成し、国土交通大臣に認定申請を行うことが必要です。試験合格者、技能実習2号修了者、既に日本で就労中の特定技能外国人の転職者、いずれの場合であっても、新たに特定技能雇用契約を締結するときは、必ず国土交通大臣の認定が必要です。
この受入計画認定のシステムは建設分野においてのみ実施され、労働環境の適正化等、特定技能外国人を受け入れるにあたって建設業界として必要であると認められる事項について、国土交通大臣による認定及びその実施状況の継続的な確認により担保しようとするものです。
在留資格「特定技能」は、生産性向上や国内人材確保の取組みを行ってもなお、人材を確保することが困難な状況にあるため必要と認められる場合に限って外国人材の受入れを可能とするものです。国内で人材の確保に係る相応の努力を行っているかどうかが、重要な審査のポイントです。
職員に対する処遇をおろそかにしていないかや、適正な労働条件による求人の努力を行っているかについて審査されます。したがって、ハローワークで求人した際の求人票又はこれに類する書類や特定技能所属機関が雇用している日本人技能者の経験年数及び報酬額(月額)を確認できる賃金台帳の内容を確認した結果、適切な雇用条件(処遇等)での求人が実施されていない場合や、既に雇用している職員(技能者)の報酬が経験年数等を考慮した金額であることが確認できない場合は、建設特定技能受入計画は認定されないこととなります。
その他の国内人材確保の取組みとしては、例えば、建設技能者の技能及び経験を適切に評価して処遇改善を図ることを目的として建設業界全体で取り組んでいる建設キャリアアップシステムに加入し、積極的に運用していること等が想定されます。
職員の適切な処遇の確保、適切な労働条件を提示した労働者の募集等を行っているかについては、ハローワークで求人した際の求人票又はこれに類する書類(建設特定技能受入計画認定申請日から1年以内のもの)によって確認されるところ、補足事項がある場合には、その内容を記入することになります。
また、就業規則や賃金規定を適切に定め、運用されているかも国内人材確保の取組みの一環として評価され、建設特定技能受入計画認定後も、国又は適正就労監理機関により必要に応じて助言、改善指導が行われます。
報酬予定額については、「同等の技能を有する日本人が従事する場合と同等額以上の報酬を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給を行うとともに、その旨を特定技能雇用契約に明記していること」が要件とされています。
【報酬の額】
1号特定技能外国人は技能実習修了者と同様に、既に一定程度の経験又は技能等を有していることから、相応の経験を有する者とそて扱う必要があります。なお、建設分野特定技能1号評価試験又は技能検定3級合格者は3年以上の経験を有する者として扱われます。このため、報酬予定額を決める際には、技能実習生(2号)を上回ることはもちろんのこと、実際に1号特定技能外国人と同等の技能を有する日本人の処遇が低い場合は、処遇改善等、国内人材確保に向けた取組みを行っておらず、建設告示3条3項1号ホの基準を満たさないものと判断されます。
特定技能所属機関に比較対象となる日本人の技能者がいない場合においても、特定技能所属機関としては、例えば、就業規則や賃金規定に基づき、3年程度又は5年程度の経験を積んだ者に支払われるべき報酬の額を提示することや、周辺地域における建設技能者の平均賃金や設計労務単価等を根拠として提示する等、適切な報酬予定額の設定がされていることにつき、客観的に合理的理由を説明する必要があります。
国土交通省の建設特定技能受入計画の認定審査において、同等の技能を有する日本人と同等額以上の原則の徹底、賃金が高い地域への特定技能外国人の偏在、集中の観点から、申請書に記載された報酬額について
と比較して審査を行い、低いと判断される場合には引き上げるよう指導されることがあります。その場合には、特定技能所属機関は、報酬額を変更の上で、再度、雇用契約の重要事項説明や契約締結の手続きを行うことになります。
また、1号特定技能外国人については、建設キャリアアップシステムへの技能者登録が要件となっていますので、同システムによる能力評価を活用しつつ、技能レベルに応じた適切な処遇を心がけることが求められます。
【報酬の支払形態】
日給制や時給制の場合、季節や工事受注状況による仕事の繁閑によりあらかじめ想定した報酬予定額を下回ることもあり、報酬面のミスマッチが特定技能外国人の就労意欲の低下や失踪等を引き起こす可能性を否定できません。したがって、特定技能外国人については安定的な報酬を確保するため、仕事の繁閑により報酬が変動しないこと、すなわち月給制によりあらかじめ特定技能外国人との間で合意を得た額の報酬を毎月安定的に支払うことが必要です。特定技能所属機関で雇用している他の職員が月給制でない場合も、特定技能外国人に対しては月給制による報酬の支払いが求められます。
「月給制」とは、「1カ月単位で算定される額」(基本給、毎月固定的に支払われる手当及び残業代の合計)で報酬が支給されるものを指します。特定技能外国人に支給される報酬のうち「1カ月単位で算定される額」が、同等の技能を有する日本人の技能者に支払われる1カ月当たりの平均的な報酬額と同等であることが求められます。働く日数に応じて報酬が毎月変わるような日給月給制は認められません。
特定技能外国人の自己都合による欠勤(年次有給休暇を除く)分の報酬額を基本給から控除することは差し支えありませんが、会社都合や天候を理由とした現場作業の中止等による休業について欠勤の扱いとすることは認められません。天候を理由とした休業も含め、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、労働基準法に基づき、平均賃金の60%以上を支払う必要があります。また、休業する日について本人から年次有給休暇を取得する旨の申出があった場合、年次有給休暇としても問題ありません。
1カ月当たりの所定労働日数が変動したり、変形労働時間制を採用することにより1カ月の所定労働時間数が変動したりする場合も、「1カ月単位で算定される額」で報酬を支給しなければなりません。
【昇給等】
技能の習熟(実務経験年数、資格・技能検定を取得した場合、建設キャリアアップシステムの能力評価におけるレベルがステップアップした場合等)に応じて昇給を行うことが必要であり、その昇給見込み額等をあらかじめ特定技能雇用契約や建設特定技能受入計画に記載しておくことが必要です。
また、賞与、各種手当や退職金についても日本人と同等に支給する必要があり、特定技能外国人だけが不利になるような条件は認められません。
特定技能所属機関は、必ず建設告示第2の雇用契約に係る重要事項説明書を用いて、1号特定技能外国人に支払われる報酬予定額や業務内容等について、事前に当該外国人が十分に理解することができる言語を用いて説明し、当該契約に係る重要事項について理解していることを確認する必要があります。
「平成31年3月28日付基発0328第28号・厚生労働省労働基準局長通知」記2に記載された事項に係る、高所からの墜落・転落災害、機械設備、車両系建設機械等によるはさまれ・巻き込まれ等のおそれのある業務、化学物質、石綿、電離放射線等にばく露するおそれのある業務や夏季期間における屋外作業等の暑熱環境における作業等の危険又は有害な業務に特定技能外国人を従事させる可能性がある場合には、その旨を当該特定技能外国人に説明し、理解を得なければ当該業務に従事させることはできません。また、転倒災害発生のおそれとその防止対策等について、当該特定技能外国人が理解していることを確認する必要があります。当該業務に特定技能外国人を従事させる可能性がある場合には、必ず建設告示第2の「6.業務内容」欄に明記の上、健康上のリスクとその予防方策について、具体的かつ丁寧に説明を行い、当該外国人から理解・納得を得た場合に限り、雇用契約を締結するようにしてください。なお、従事させる理由のいかんによっては、建設特定技能受入計画が認定されないこともあり得ます。
説明は、直接対面で行うことを必ずしも要さず、テレビ電話等の映像と音声が双方向で確認できるもので行うことも可能であり、説明時に通訳が同席することは差し支えありません。
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人の受入れを開始し、若しくは終了したとき又は当該外国人が特定技能雇用契約に基づく活動を継続することが困難となったとき(経営悪化に伴う雇止め、建設特定技能受入計画の認定の取消し、在留資格の喪失、特定技能外国人の失踪等)は、国土交通大臣に報告を行う必要があります。
特に、告示第3条第3項第4号による受入れの報告は、受入れ後原則として1カ月以内に行う必要があります。
なお、特定技能雇用契約の終了や特定技能外国人が活動を継続することが困難となったときは、別途、地方出入国在留管理局に対する届出も必要です。
建設キャリアアップシステムへには、特定技能所属機関のみならず、特定技能外国人も入国後速やかに登録する必要があります。既に日本に在留している技能実習修了者等を雇用する場合には、建設キャリアアップ技能者IDを明らかにする書類(建設キャリアアップカードの写し)を、申請時に提出する必要があります。
海外から新規に入国する特定技能外国人の場合は、入国後原則1カ月以内に、建設キャリアアップシステム技能者IDを明らかにする書類(建設キャリアアップカードの写し)を国土交通省へ提出する必要があります。国土交通省は、特定技能外国人に限らず技能者全員を建設キャリアアップシステムに登録することを通じて、特定技能所属機関における客観的基準に基づく礒野と経験に応じた賃金支払いの実現を図ることを考えています。
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人が従事する建設工事において、下請負人である場合には、発注者から直接工事を請け負った建設業者(元請建設業者)からの国土交通省が定める「特定技能制度及び建設就労者受入事業に関する下請指導ガイドライン」に基づく指導に従わなければなりません。
例えば、特定技能所属機関が特定技能外国人を現場に入場させる際には、現場入場届出書を各添付書類と併せて元請建設業者に提出することが必要となります。
建設特定技能受入計画の認定証の情報の全部又は一部は、建設告示4条2項の規定に基づき、建設キャリアアップシステムを運用する一般財団法人建設業振興基金に提供されますので、同システムに蓄積されることになり、その情報に基づき、元請建設業者が指導することがあります。
1号特定技能外国人の総数と外国人特定建設就労者の総数との合計が、特定技能所属機関となろうとする者の常勤の職員(1号特定技能外国人、技能実習生及び外国人特定建設就労者を含まない。)の総数を超えないことが必要です。建設技能者は、一つの事業所だけで働くわけではなく、様々な現場に出向いて働くことが想定されますので、支援を要する1号特定技能外国人を監督者が適切に指導し、育成するためには、一定の常勤雇用者が必要であるためです。なお、この人数枠は、事業所単位ではなく法人単位で評価します。
国土交通大臣が、1号特定技能外国人の受入れ後に受講すべき講習又は研修(以下「受入れ後講習」という。)を指定した場合は、特定技能所属機関は、1号特定技能外国人の受入れ後、当該外国人に対し、受入れ後講習を受講させることが必要です。指定した受入れ後講習に参加させない場合には、認定要件を満たさないものとして取り扱われます。ただし、登録法人が受入れ後講習に相当する内容を当該外国人に対して本邦上陸前に行った場合、又は計画の認定前に特定技能所属機関が適正就労監理機関による事前巡回指導を受けた場合には、この限りではありません。
受入れ後講習の受講のための旅費や受講料等の費用は、特定技能所属機関が負担することになります。
国土交通大臣が指定する受入れ後講習の一つに、適正就労監理機関が実施する講習があります。本講習は、建設特定技能受入計画の真正性確認や母国語相談ホットライン窓口、転職支援等の仕組みの情報提供等、適正就労環境確保の観点から、1号特定技能外国人として就労を開始するにあたって必要な知識情報等を付与することを目的として行うものです。
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人の受入れ後、概ね3か月以内に、当該外国人に対し、当該講習を受講させることが必要です。当該講習については、適正就労監理機関から特定技能所属機関に対し、1号特定技能外国人の受入れ後に日時や場所等の通知がなされますので、受講可能なものを選択し受講させることになります。この他、国土交通大臣が指定する講習又は研修の内容については、国土交通省のホームページにおいて公表されています。
建設特定技能受入計画には、特定技能外国人に従事させる業務に従い、労働安全衛生法に基づく特別教育等の安全衛生教育又は技能講習等を箇条書きすることが求められます。特定技能外国人に従事させようとする業務に必要となる安全衛生教育の内容が満たされていない場合、国土交通省は特定技能所属機関に対し、指導を行うことがあります。
なお、「平成31年3月28日付基発0328第28号・厚生労働省労働基準局長通知」記2に記載された事項に係る、危険又は有害な業務に特定技能外国人を従事させる場合には、雇入れ時等の安全衛生教育や特別教育等において、当該危険又は有害な業務に伴う労働災害発生のおそれとその防止対策等について正確に理解させなければなりません。
労働安全衛生法に基づく特別教育等の安全衛生教育又は技能講習等の受講にための旅費、受講料等は、特定技能所属機関が負担することになります。
特定技能所属機関は、1号特定技能外国人の受入れ後、在留期間中のできる限り早期に職種ごとの能力評価基準に定める安全衛生講習を受講させ、建設キャリアアップシステムのレベル2の能力レベルに相当する技能教育を施す必要があります。
特定技能所属機関は、受入後3年以内に技能検定2級、5年以内に技能検定1級の取得を目指す党、5年間の在留期間を見据えた技能の向上を図ることが必要です。
建設特定技能受入計画には、特定技能外国人の在留中の具体的な技能習得の目標を記載することは求められます。
建設特定技能受入計画の記載事項に変更がある場合は、特定技能所属機関は、国土交通大臣対して建設特定技能受入計画の変更申請又は変更届出を行う必要があります。変更については、原則オンラインによる申請又は届出となり、変更手続きを行わずに特定技能外国人の受入れを継続した場合は、建設特定技能受入計画の認定が取り消される可能性があります。
(変更申請が必要なケース)分野参考様式第6-6号
認定証記載事項の変更
例:特定技能所属機関の住所、代表者、常勤職員数、受入人数、就労場所等
(変更届出が必要なケース)分野参考様式第6-7号
認定証記載事項以外の建設特定技能受入計画記載事項の変更
例:特定技能所属機関等の連絡先等
建設告示8条のいずれかに該当するときは、建設特定技能受入計画の認定が取り消されることとなります。
具体的項目は次の通り
建設特定技能受入計画の認定が取り消された場合は、特定技能所属機関は、特定技能外国人を他の特定技能所属機関へ転職させるための支援を行う必要があります。
建設分野の場合、建設告示14条の登録法人が転職先の斡旋を行うことになっていますので、特定技能所属機関自らが転職先を確保できない場合には、登録法人に対して、転職の支援が必要な旨、報告を行うことが求められます。
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