特定技能雇用契約の内容の基準

関係規定

入管法第2条の5第1項及び第2項

別表第1の2の表の特定技能の項の下欄第1号又は第2号に掲げる活動を行おうとする外国人が本邦の公私の機関と締結する雇用に関する契約(以下この条及び第4章第1節第2款において「特定技能雇用契約」という。)は、次に掲げる事項が適切に定められているものとして法務省令で定める基準に適合するものでなければならない。

一 特定技能雇用契約に基づいて当該外国人が行う当該活動の内容及びこれに対する報酬その他の雇用関係に関する事項

二 前号に掲げるもののほか、特定技能雇用契約の期間が満了した外国人の出国を確保するための措置その他当該外国人の適正な在留に資するために必要な事項

2 前項の法務省令で定める基準には、外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的取扱いをしてはならないことを含むものとする。

ポイント
  • 特定技能雇用契約は、特定技能外国人が行う当該活動の内容およびこれに対する報酬を含む雇用関係に関する事項、また特定技能雇用契約の期間が満了した後の外国人の出国を確保するための措置や、当該外国人の適正な在留を支援するために必要な事項を適切に規定するものとされます。この契約は、特定技能基準省令で定められた基準に従い、適合するものでなければなりません。
  • 外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の提供、福利厚生施設(社員住宅、診療施設、保養所、体育館など)の利用、またはその他の待遇において差別的な取り扱いを行ってはなりません。この原則は、労働基準法第3条※の規定に基づき、就労資格共通の原則として均等待遇を定めた趣旨に則ったものです。

※【労働基準法第3条】 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱いをしてはならない。

1.従事させる業務

関係規定

特定技能基準省令第1条第1項第1号

出入国管理及び難民認定法(以下「法」という。)第2条の5第1項の法務省令で定める基準のうち雇用関係に関する事項に係るものは、労働基準法(昭和22年法律第49号)その他の労働に関する法令の規定に適合していることのほか、次のとおりとする。

一 出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の特定技能の項の下欄に規定する産業上の分野等を定める省令(平成31年法務省令第6号)で定める分野に属する同令で定める相当程度の知識若しくは経験を必要とする技能を要する業務又は当該分野に属する同令で定める熟練した技能を要する業務に外国人を従事させるものであること。

ポイント

◆1号特定技能外国人の技能基準

  • 1号特定技能外国人については、一定の専門性を有する業務に従事させることを目的とし、相当程度の知識または経験を必要とする技能を有していることが条件です。この技能基準は、分野別運用方針および分野別運用要領で定められた基準を満たしている必要があります。

◆2号特定技能外国人の技能基準

  • 2号特定技能外国人については、より高度な専門性を求められる業務に従事させることが目的であり、熟練した技能を有していることが条件となります。この基準も同様に、分野別運用方針および分野別運用要領で定められた水準を満たしている必要があります。

◆業務区分の変更手続き

  • 特定産業分野の範囲内で業務区分に変更が生じた場合には、特定技能雇用契約に係る届出書を提出し、変更後の業務区分について届け出を行う必要があります。その際には、変更後の業務区分に応じた技能の証明として、相当程度の知識または経験を有すること、もしくは熟練した技能を有することを証明する資料(例:技能試験の合格証明書)を添付する必要があります。

◆特定産業分野変更を伴う場合の手続き

  • 業務区分の変更に伴い特定産業分野自体が変更となる場合は、在留資格変更許可申請を行うことが必須となります。この手続きを通じて、外国人労働者が適切な資格で就労を継続できるよう確保することが求められます。

2.所定労働時間

関係規定

特定技能基準省令第1条第1項第2号

二 外国人の所定労働時間が、特定技能所属機関に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同等であること。

ポイント
  • 特定技能外国人の所定労働時間は、特定技能所属機関に雇用される通常労働者の所定労働時間と同等であることが求められます。この規定は、特定技能外国人が所属機関内で公平な待遇を受けることを保証するためのものです。

所定労働時間の定義

  • 「所定労働時間」とは、雇用契約や就業規則で定められた労働時間(休憩時間は含まない)を指します。特定技能所属機関が就業規則を作成している場合は、当該就業規則に定められた時間が適用されます。

通常の労働者の定義

  • 「通常の労働者」とは、いわゆる「フルタイム」で雇用されている一般の労働者を指し、アルバイトやパートタイム労働者は含まれません。本制度における「フルタイム」とは、以下の条件を満たす雇用形態を指します。
  1. 労働日数が週5日以上年間217日以上であること
  2. 週の労働時間が30時間以上であることを条件とします。

複数企業での雇用禁止

  • 特定技能外国人はフルタイムで業務に従事することが求められるため、複数の企業が同一の特定技能外国人を雇用することは認められません。この規定により、特定技能外国人が安定した雇用環境で働くことを確保しています。

3.報酬

関係規定

特定技能基準省令第1条第1項第3号及び第4号

三 外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること。

四 外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと。

ポイント
  • 特定技能外国人の報酬額は、同等の業務に従事する日本人労働者の報酬額と同等以上であることが求められます。この規定は、外国人であるという理由による不当な報酬の減額を防ぐために設けられています。

◆日本人労働者との報酬比較

  • 同程度の技能を有する日本人労働者が存在する場合、特定技能外国人が担当する職務内容や責任の程度が日本人労働者と同等であることを説明した上で、報酬額が同等以上であることを証明する必要があります。また、この規定は、日本人労働者の報酬水準を不当に低下させることを防ぐ目的も含まれており、公平な賃金設定が重要です。

◆同程度の技能を有する日本人労働者がいない場合

  • 日本人労働者との直接的な比較が難しい場合には、特定技能外国人に対する報酬額が日本人労働者の報酬額と同等以上であることを説明する必要があります。
  1. 賃金規定がある場合:企業の報酬体系に基づいて説明を行います。

  2. 賃金規定がない場合:外国人労働者が担当する職務内容や責任の程度が最も近い職務を担う日本人労働者と比較し、その違いを明確にする形で説明を行います。

◆差別の禁止と待遇の公平性

  • 外国人労働者であることを理由とした差別的な取り扱いは許されません。報酬の決定のみならず、教育訓練の提供、福利厚生施設(社員住宅、診療施設、保養所、体育館など)の利用を含む待遇についても、公平であることが求められます。

報酬の定義

  • 「報酬」とは、「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」を指します。ただし、以下の実費弁償的性質を有するもの(課税対象となるものを除く)は報酬に含まれません。
  1. 通勤手当
  2. 扶養手当
  3. 住宅手当

技能実習修了者の報酬基準

  • 特定技能外国人は、以下の技能実習修了者として、業務経験に応じた報酬設定が必要です。
  1. 技能実習2号修了者:概ね3年間の業務経験者として扱う
  2. 技能実習3号修了者:概ね5年間の業務経験者として扱う
  • 技能実習生として雇用したことがある者を特定技能外国人として雇用する場合、技能実習2号修了時の報酬額を上回ることはもちろん、実際に3年程度または5年程度の経験を持つ日本人技能者に支払う報酬額とも比較し、適切な設定を行うことが求められます。

他の受入れ機関出身者の雇用

  • 留学生や他の受入れ機関で雇用されていた技能実習生を新たに雇用する場合には、特定技能所属機関の就業規則等に基づき、賃金を適切に設定する必要があります。

4.一時帰国のための有給休暇取得

関係規定

特定技能基準省令第1条第1項第5号

五 外国人が一時帰国を希望した場合には、必要な有給休暇を取得させるものとしていること。

ポイント
  • 特定技能所属機関は、特定技能外国人から一時帰国の申出があった場合、事業の適正な運営を妨げる業務上やむを得ない事情がある場合を除き、何らかの有給休暇を取得できるよう配慮することが求められます。例えば、労働基準法に基づく年次有給休暇をすでにすべて取得済みの特定技能外国人が一時帰国を希望する場合でも、追加の有給休暇または無給休暇を取得できるよう、柔軟な対応を行うことが望まれます。
    • 「有給休暇」とは、労働基準法第39条に定められた年次有給休暇を含む、一般の有給休暇を指します。
    • 「業務上やむを得ない事情」とは、特定技能外国人が担当する業務が他の労働者による代替が困難であり、休暇希望日に本人が業務に従事しなければならない合理的な理由がある場合を指します。
  • 特定技能外国人から一時帰国の申出があった場合、特定技能雇用契約において、有給または無給休暇を取得できる旨を明記する必要があります。
  • 特定技能外国人が一時帰国のために休暇を取得したことを理由に、就労上の不利益な扱いを受けていることが判明した場合、本基準に不適合とされる可能性があるため、十分な注意が必要です。
  • 業務上やむを得ない事情により一時帰国休暇の取得を認められない場合でも、代替日を提案するなど、柔軟な対応を行うことが求められます。
  • 特定技能外国人の家族が「短期滞在」で来日した際は、家族と過ごす時間を確保できるよう配慮し、滞在期間中に有給休暇を取得できるよう努める必要があります。

5.派遣先

関係規定

特定技能基準省令第1条第1項第6号

六 外国人労働者派遣等(労働派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号。以下「労働者派遣法」という。)第2条第1号に規定する労働者派遣及び船員職業安定法(昭和23年法律第130号)第6条第11項に規定する船員派遣をいう。以下同じ。)の対象とする場合にあっては、当該外国人が労働者派遣等をされることとなる本邦の公私の機関の氏名又は名称及び住所並びにその派遣の期間が定められていること。

ポイント
  • 特定技能外国人を労働者派遣法または船員職業安定法に基づき派遣労働者として雇用する場合、当該外国人の派遣先および派遣期間を事前に明確に定めることが求められます。
  • 分野別運用方針により、特定技能外国人を派遣形態で雇用できる特定産業分野は「農業分野」および「漁業分野」に限定されており、それ以外の分野での派遣雇用は認められていません。

◆労働者派遣の定義

  • 労働者派遣は、以下の法令に基づく形態を指します。
  1. 労働者派遣法(第2条第1号)
    自ら雇用する労働者を、雇用関係の下で他人の指揮命令を受け、当該他人のために労働に従事させる形態を指す。ただし、当該他人に労働者を雇用させることを約する形態は含まれない。
  2. 船員職業安定法(第6条第11項)
    船舶所有者が、自ら常時雇用する船員を、雇用関係の下で他人の指揮命令を受け、当該他人のために船員として労務に従事させる形態を指す。ただし、当該他人に船員を雇用させることを約する形態は含まれない。

◆派遣雇用に関する義務

  • 特定技能所属機関が特定技能外国人を派遣労働の対象とする場合、労働者派遣法および船員職業安定法の基準を遵守する必要があります。また、派遣事業の許可を取得するとともに、労働者派遣法に基づき、特定技能外国人に対して就業条件を明示する義務があります。(参考法令:労働者派遣法第34条および第26条第1項第4号)

◆派遣先及び派遣期間の確定

  • 派遣先および派遣期間は、原則として地方出入国在留管理局への在留諸申請時点で確定している必要があります。
  • ただし、特定技能外国人の受入れ後に、申請時に提出した派遣計画書に記載されていない派遣先へ派遣する場合は、事前に特定技能雇用契約の変更を届け出る必要があります。なお、新たな派遣先が基準に適合しない場合、当該派遣を停止するよう助言・指導が行われる可能性があります。

◆雇用形態の変更手続き

  • 直接雇用から派遣雇用へ変更する場合、派遣開始の約2カ月前までに新たな雇用契約を締結し、事前に届出を行うことが必要となります。

6.分野に特有の事情に鑑みて定められた基準

関係規定

特定技能基準省令第1条第1項第7号

七 前各号に掲げるもののほか、法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。

ポイント
  • 特定産業分野ごとの特有の事情を考慮し、各分野において個別に定められた基準に適合していることが求められます。
  • 分野によっては、告示に基準が定められていない場合があるほか、基準が告示によって規定されている場合でも、その内容は分野ごとに異なります。

1.帰国担保措置

関係規定

特定技能基準省令第1条第2項第1号

2 法第2条の5第1項の法務省令で定める基準のうち外国人の適正な在留に資するために必要な事項に係るものは、次のとおりとする。

一 外国人が特定技能雇用契約の終了後の帰国に要する旅費を負担することができないときは、当該特定技能雇用契約の相手方である特定技能所属機関が、当該旅費を負担するとともに、当該特定技能雇用契約の終了後の出国が円滑になされるよう必要な措置を講ずることとしていること。

ポイント

◆帰国費用の負担原則

  • 特定技能外国人が特定技能雇用契約の終了後に帰国する際、帰国費用は原則として本人負担となります。ただし、当該外国人が帰国費用を負担できない場合は、特定技能所属機関が費用を負担し、円滑な出国に必要な措置を講じることが求められます。

◆「旅費を負担することができないとき」の定義

  • 「旅費を負担することができないとき」とは、特定技能外国人が自己負担帰国することが困難な場合を指します。その理由については、行方不明となったケースを除き、特定技能外国人の帰国の原因を問わず適用されます。

◆必要な措置

  • 所属機関が講じるべき「必要な措置」には、以下の対応が含まれます。
  1. 帰国旅費の負担
  2. 航空券の予約
  3. 帰国までに必要となる生活支援(例:住居・食事の提供、必要な情報提供など)

◆経営上の都合による対策

  • 特定技能所属機関が経営上の都合などにより帰国費用の負担が困難となる場合に備え、登録支援機関や関連企業などの第三者と協定を結ぶことが望ましいとされています。これにより、予期せぬ事態においても適切な対応が可能となります。

◆帰国費用の積み立てに関する禁止事項

  • 特定技能外国人の報酬から控除し、積み立てて所属機関が管理することは認められません。これは、金銭その他の財産の管理に該当する可能性があるためです。報酬の適正な支払いが確保されるよう、適切な方法で帰国費用を負担する必要があります。

2.健康状況その他の生活状況把握のための必要な措置

関係規定

特定技能基準省令第1条第2項第2号

二 特定技能所属機関が外国人の健康の状況その他の生活状況を把握するために必要な措置を講ずることとしていること。

ポイント
  • 特定技能外国人が安定的に日本で就労活動を行えるよう、健康状況および生活状況を適切に把握するための措置を講じることが求められます。

健康状況の把握のための措置

「健康状況の把握のための措置」とは、以下の対応を指します。

  • 労働安全衛生法に基づく健康診断の実施
    • 雇入れ時の健康診断
    • 雇用期間中の定期健康診断
  • 健康状況の確認
    • 特定技能外国人に対し、定期的な聞き取り調査を実施し、健康状態に問題がないかを確認

生活状況の把握のための措置

「その他の生活状況の把握のための措置」とは、以下を含みます。

  • 緊急連絡網の整備
  • 定期的な面談の実施
    • 日常生活において困っていることがないかを確認
    • トラブルに巻き込まれていないかを確認

これらの措置は、1号特定技能外国人支援計画に基づく支援と併せて実施することも可能です。

3.分野に特有の事情に鑑みて定められた基準

関係規定

特定技能基準省令第1条第2項第3号

三 前各号に掲げるもののほか、法務大臣が告示で定める特定の産業分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。

ポイント
  • 特定産業分野ごとの特有の事情に鑑みて個別に定める基準に適合していることを求めるものです。
  • 分野によっては告示で基準を定めていない場合もあるほか、告示で基準が定められている場合であっても、その内容は分野ごとに異なります。

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